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人類種の天敵が一年戦争に介入しました
第1話
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をつぶさに見てきた。そこにあるのは、30倍の国力差を戦術的な成功で跳ね除け続け、しかし戦略的な失敗に青息吐息となったジオン公国の姿であった。

「ジオンに兵無し」

 レビル中将の演説によって地球連邦政府は戦争の継続を決意。南極条約は幾つかの戦時協定を結ぶにとどまり、平和への道は遠ざかったのである。艦隊決戦の劇的な勝利ですら戦争終結と繋がらなかったジオン公国は、方針を転換して地球の直接占拠を目指す。戦いは宇宙から地上にその舞台を移そうとしていた。そして、3月4日。黒海沿岸、コーカサス地方を占拠すべく、ジオン公国は第一次降下作戦を実行する。赤く燃える降下ユニットが地球に呑み込まれていく様は、地上で散っていく命の暗喩であったのかもしれない。

 時を同じくして、地上で流星群を見上げる青年がいた。一瞥した限りでは特筆すべき特徴のない青年である。親の代わりに家事をこなしていたため、意外と家庭的で尽くすタイプ。笑うと実年齢より幼く見え、存外甘いと言われるほどロマンチストだが、苦労を避けず努力をいとわず、一度決めると初志貫徹する芯の強さと度胸を持つ。そうした青年の内面は、その無表情からは窺い知ることは出来ない。
 青年は、この宇宙世紀の人間ではなかった。青年の生まれ育った世界において、史上最も多くの人命を奪った個人、人類種の天敵とすら言われた殺戮者である。死を呼ぶ翼、黒い鳥、人のカタチをした終わり。人類の半数以上をその手に掛けた、人類史上最大の虐殺者。触れたもの全てを壊すその魔の手が、新たな世界に伸ばされようとしていた。
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