艦隊司令部着任
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転することはまれだ。
車内では必然的に会話が生まれる。
本来であれば先輩でもあり、部下でもあるという環境はともすれば互いに不幸だろう。
互いに遠慮が生まれる状況になる可能性が高かったが。
「いや、あの烈火のアレスと同じところで働けるというのは幸運なことですね。準々決勝で私の友人があたったことがあったのですが、完敗だったといっていましたよ。ま、それで稼がせてももらったのですけどね」
その点において、運転席の人物、リスト・アドリアネードは適任であったのかもしれない。
上官への敬語は忘れずに、しかし遠慮することもなく積極的に話かける。
どことなく嬉しそうな様子は、艦隊司令部で年の近い人間が入ってきたことよることかもしれない。あるいは、アレスが思っている以上に、階級や年の差というものは、そこまで大きな違いではないのかもしれない。
これは実際にアレス・マクワイルドが軍に配属してから気が付いたことだったが、この世界では比較的―−というか、異常なほどに階級が上がりやすい。
帝国でのラインハルトの例だけではなく、ミッターマイヤーやミュラーといった有名な人間も二十代で将官まで上がっている。
それは皇帝の発言が左右される帝国だけではなく、同盟でも同様だ。
ヤンやアッテンボローなどは同盟の崩壊間際のヤケクソ昇進があったとはいえ、二十代で将官にあがっているし、あのドーソンですら四十代で中将の階級になっている。他にも有名なホーランドは三十代で中将だ。
通常であれば、軍のトップを担う将官職をそこまで簡単に増やさない。
将官が増えたところで、役職の数は決まっているからだ。
無駄に役職を増やしたところで、仕事がなければ意味がない。
中将の数が増えたところで、艦隊の数が増えてくれるわけでもない。
だが、この時代ではそれを可能としている。
いや、そうならざるべきだったのかとアレスは思う。
戦死者だ。
役職の数が同じであったら、その役職にいた人間が死んだ場合には当然代わりを送らなければならない。現代であれば、将軍階級の人間が死ぬことはまずありえないのだが、この時代は実に、ぽこぽこともぐら叩きのように死んでいく。将官クラスですらそうなのだから、現場の数はさらに多い。
結果として、本来であれば時間をかけて学び、力をつけたはずの人間が何も知らぬままに役割を押し付けられて階級だけがあげていく。ヤン・ウェンリーの様に優秀であれば問題ないのだが、現実的にはドーソンとまではいかなくても、経験不足な人間が多い。
まだ帝国であったならば、無能な貴族から優秀な平民が台頭できるという利点もあったのだろうが、同盟ではそれも期待ができない。そう考えると単に帝国と同盟の違いは、ラインハルトの台頭や戦力差以上に、絶望的な
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