七夕綺譚
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あの子が死んでから三年が過ぎた。私は「医者になる」という夢をあの子の死と一緒に葬った。今の私はなりたいものも決まらなくなって、大学を中退して無為に時を過ごしている。
わかっている、わかっているわ。あの子は本当は、私がこんな風になることなんて望んではいないってことくらい。それでも、あの子の死と共に夢は砕けて、私は医者になるための勉強を続けることができなくなってしまった。
そしてまた、七夕の季節がやってくる。
神様なんて信じないけれど。信仰心なんてとうに失ってしまったけれど。
それでも、これくらいなら願うことはできるでしょう?
私は短冊を手にとって、また不器用な字で願いを記す。
「裕斗、裕斗。あの世でもどうか幸せに――」
叶ったのかなんて確認はできない願い。そもそもあの世の存在すらわからないけれど。あの世の存在なんて、科学できっちり証明されてなんていないけれど。
願うくらいならできるでしょう?
私はあの子の死を経験してから、具体的な願いを短冊に書くのをやめたんだ。そうすればいくらでも解釈が可能になり、叶わなくなっても悲しみや怒りを軽減できると、そう考えたから。
窓の外には星が降る。宇宙のゴミが大気圏内の摩擦で燃え盛り発光し、瞬く間に消える。
こうして季節は再び巡り、私は来年もまた、短冊に何か願いを書くのだろう。
あの子の死を、胸にずっと抱えながら。
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