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真田十勇士
巻ノ百四十二 幸村の首その四

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「使える、だからいいな」
「はい、それでは」
「分身を盾にもしてですな」
「そしてそのうえで」
「我等はですな」
「大坂にはですな」
「うむ、帰られる。しかしな」
 幸村は十勇士達にさらに話した。
「お主達は城に帰ってもらうが」
「しかしですな」
「策がおありですな」
「左様ですな」
「そうじゃ、拙者は分身達に影武者にもなってもらうが」 
 そのうえでというのだ。
「大坂城ではなくな」
「他にもですな」
「行くべき場所がある」
「だからですな」
「今は城に帰らず」
「そしてですな」
「右大臣様を逃がす策を用意しておく」
 それをというのだ。
「よいな」
「はい、それでは」
「そこはお願いします」
「我等は大助様と共に右大臣様をお護りします」
「最後の最後まで」
「その時が来るまで」
「そうせよ、ではな」
 それではとだ、幸村も十勇士達に応えてだった。  
 そうしてだった、真田の軍勢も退きはじめた。その動きを逃げつつ見てだった。
 家康はまだ馬を駆けさせていたが危機が去ったと見てほっと胸を撫で下ろしてそのうえで己のすぐ後ろにいた大久保に言った。
「何とかじゃな」
「はい、ここはです」
「生き延びられた様じゃな」
「諦めなかったからですな」
 確かな声でだ、大久保は家康に槍を手にしたまま答えた。
「この様にしてです」
「わしは助かったか」
「左様です、さしもの真田殿もです」
「これでか」
「軍勢を退かせています」
「遂に攻めきれなかったか」
「その様です」
 大久保も後ろを見た、そのうえで家康に述べた。
「徐々にですが退いていっています」
「そうか、ではな」
「これからはですな」
「うむ、惜しい男じゃが」
 多くの戦を経て生き抜いてきた者としてだ、家康は大久保に答えた。
「ここでな」
「真田殿の御首を」
「首を取った者は禄だけでなく茶器も馬もやろう」
 そうした褒美を弾むというのだ。
「一国に匹敵する茶器も刀もじゃ」
「思いのままですか」
「そうじゃ、それだけのものをやる」
「だからですな」
「ここで討つのじゃ」
 幸村、彼をというのだ。
「そしてそのうえでじゃ」
「明日の戦の憂いをですな」
「払っておくのじゃ」
「わかりました、それではその様に」
 伝えるとだ、大久保は家康にこの度の戦の槍奉行として応えた。そしてすぐに家康の言葉を伝えてだった。
 退く馬の軍勢の向きを変えさせた、これで攻守が逆になったが。
 ここでだ、家康は周りの者達に問うた。
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