第二章
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「貴殿が鼠が苦手と聞いた故」
「それでか」
「こうさせてもらった」
「よくもやってくれたな」
「これでこの人は救わせてもらった」
「そうだな、しかしだ」
「また別の人にか」
「あたしは憑いてやるからな」
負け惜しみめいた声で言うのだった。
「覚えていろよ」
「ではその度にだ」
「鼠を出すっていうのか」
「そうしてみせよう」
神父はありすに平然と言った、そしてだった。
忌々し気に何処かへと姿を消したありすを見送った。そのうえで彼女から解放された女性に対して言った。
「これで、です」
「私は助かったのですか」
「そうです」
その通りという返事だった。
「お喜び下さい」
「そうですか、よかったです」
女性は悪霊から解放されたことに喜んだ、だが。
ここでだ、女性は神父にあらためて尋ねた。
「そのことはいいのですが」
「ありすが何故鼠を恐れるのか」
「それがわからないのですが」
こう言うのだった、その首を傾げさせて。
「聞くだけで恐ろしい悪霊ですが」
「そのことですが」
神父は女性のその疑問にも答えた。
「悪霊といえど元は人間ですね」
「はい、生きていた頃は」
「人間だった時からです」
「ありすは、ですか」
「鼠が怖かったのでしょう」
「それで、ですか」
「悪霊となってもです」
つまり今もというのだ。
「鼠が怖いのでしょう」
「人間だった時と同じくですか」
「そうなのでしょう」
「それで今もああしてですか」
「ありすへの退魔の時はです」
まさにというのだ。
「あの様にしてです」
「鼠を使ってですか」
「退けます、彼女が恐れているが故に」
「そうですか。あれだけの悪霊でも怖いものがあって」
それでとだ、女性は思うのだった。
「それが鼠だとは」
「意外ですね、ですがありすも元は人間であり人間は誰でもです」
「怖いものがあるので」
「悪霊も然りなのです」
「そういうことなのですね」
「はい、ではこれで貴女は助かりました」
神父は彼にあらためて話した。
「このことを神に感謝しましょう」
「それでは」
女性は神父の言葉に頷いた、そしてだった。二人は神父の助手達と共に教会の礼拝堂で神に感謝の祈りを捧げた、そのうえで神父は今回働いてくれた鼠達にも礼を言ってペットショップに返した。全ては彼等のお陰と感謝しつつ。
悪霊退散 完
2018・6・17
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