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いたくないっ!
第十一章 遥か、はるか
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によって、各々の心に納得が見つかればよいのである。
 次回放映まで乗り切るための、パワーを充電することさえ出来ればよいのである。

 パワーといっても、元気活力といった前向きなものではなく、狂わぬための精神防壁を維持するためのパワーだが。

 彼らは現在、例の「ほのかの胴体両断シーン」と、その前後部分を繰り返し繰り返し観ていた。
 そこからなにかを見出そう、と。
 それを語り合って、よい予測を導き出して、みんなで元気を出そう、と。

 しかし、

「やはり、映像だけからの判断は不可能なのであろうか」

 何回目かの視聴で、トゲリンが不意にネチョネチョ声でぼやき、ため息を吐いた。

「そうだね。まあ、そうとしか考えられないように、映像を作って見せているからねえ」

 そのようなことは理解した上での、それでもなにか発見出来ることがあるかも知れない、という今日の集まりだったわけだが、

 結局、
 なにも分からなかった。
 シルエットから想像出来ることがおそらく事実なのだろう、ということくらいしか。

 なお、この件、こうして騒いでいるのは定夫たちだけではない。
 全国のオタたちの間で、騒動になっていた。

 大人気テレビアニメの主人公が、ストーリー半ばにしてあっさり胴体を両断されたのである。当然というものだろう。

 ネットニュースや情報ワイドによれば、夕方に放映している大手キー局の全国区アニメとあって、視聴者からの猛烈な抗議が殺到したらしい。

 また、ほのかファンによる、助命嘆願運動もあちこちで起きているということだ。
 定夫たちには、そうした運動に参加するつもりは毛頭なかったが。

 来週の話など、とっくに完成しているわけで、運動を起こしてなにが変わるはずもないからだ。
 第二期への要望というなら、分からなくはないが。

 事実を捻じ曲げようということでなく、ただ次回放映までの間に、少しでも安息を得たいだけなのだ。定夫たちは。

 結局、トゲリンのいう通り映像からはなにも分からなかったが。

 結局、もう出尽くしている話を、いたずらに繰り返すことしか、心を慰める術がなかった。

 ほのかは主人公である、だから死ぬはずがない。
 ラストで誰かがほのかに語り掛けているのに、死ぬはずがない。
 魔法使いなんだ、なんとかなる。
 主役交代なら、アメアニにシルエットが乗るはずだ。
 多分、だから、ほのかは死んでいない、もしくは復活する。

 と。
 果たして、どうなるのであろうか。
 惚笛ほのかの、生命は。

 判明するまで、あと数日。
 次の木曜日、午後六時。
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