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63部分:ローゲの試練その十七
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ローゲの試練その十七

 ラートボートはその要所を一つずつ制圧していった。予想された抵抗もなくそれは順調に進んだ。
 だがローエングリンはそこに違和感を感じていた。ここにはクンドリーがいる筈だからだ。
「おかしいな」
 彼は本陣において陸戦部隊の作戦の進行状況を見て言った。
「帝国軍の姿もないな」
「既に撤退したのではないでしょうか」
「クンドリーがいるというのにか?」
「何らかの事情で。退かざるを得なかったのかと」
 フルトヴェングラーが述べた。
「若しくは別の事情でここからいなくなったのでは」
「別の事情」
 それを聞いたローエングリンの眉が動いた。
「まず考えられるケースは軍の崩壊か」
「はい」
「あの帝国軍に限ってあまり考えられないことではあるがな」
「ですが軍港等を見る限り撤退の痕跡はありません」
「そうなのか」
「はい。先程入った報告によるとそうです」
「増々妙だな」
 ローエングリンはそれを聞いてさらに呟いた。
「他の軍港もか」
「現時点で占領している軍港は全てそうです」
「わかった。では他の軍港も占領していくように」
「はっ」
「基地や他の軍事施設はどうか」
「やはり同じです」
 次席参謀であるカラヤンが答えた。
「兵士一人おりません」
「そうか。では他の地域に集結しているか」
「ケースとしては考えられます」
「では部隊には警戒を続けるように言ってくれ」
「了解」
 参謀達はそれに応えた。
「ではこのまま戦闘態勢のまま占領作戦を続けます」
「頼むぞ。そして何かあったら逐次知らせてくれ」
「わかりました」
 こうして占領作戦は続けられた。そして程なくしてラートボートの七割程が占領された。だがそれでも帝国軍の影はなかった。そして全ての軍港が占領されたがやはりそこにも撤退の痕跡はなかった。
「この惑星からは逃げ出してはいないということか」
「軍港を見る限り」
 フルトヴェングラーが言った。
「彼等は間違いなくこのラートボートにおります。生きているのなら」
「生きているのならな」
「ではこのまま戦闘態勢のまま残り三割の占領を」
「いや、待て」
 ローエングリンはラートボートの地図を見ながら言った。
「この山があるな」
「はい」
 ローエングリンはある山を指差した。見ればそこには残された地域で最大の帝国軍の軍事基地があった。
「ここを調べてみたい」
「調べてみるとは」
「私自ら行く」
 ローエングリンは言った。
「司令御自身で」
「そうだ。ここは僅かな精鋭部隊で向かいたい」
「そして司令が陣頭指揮を」
「そうだ。残された地域で最大の軍事拠点だ」
「はい」
「ならば何かあると思った方が自然だ。ここは奇襲を仕掛けたい」
「それで宜しい
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