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麦飯
第一章
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                麦飯
 一介の百姓から天下人にまでなった、豊臣秀吉はまさに栄耀栄華を極めていた。常にみらびやかな服を着て豪奢な城や御殿を次々に建て美女達に囲まれていた。
 そうして食事も贅沢の限りにあった、その彼を見て石田三成がこんなことを言った。
「まさに天下人ですな」
「うむ、今のわしはな」
「栄耀栄華の中にあり」
「別に民百姓を搾取してはおらんぞ」
 例え贅沢を極めてもとだ、秀吉は石田に笑って返した。
「そうであるな」
「若し民百姓を搾取していれば」
「お主が言うな」
「それは天下人のすることではありませぬ」
 そう思うが故にとだ、石田は秀吉に実直に答えた。
「そう思ったならば」
「お主は誰でも遠慮はせんからな」
「はい、言うべきことは言わねば」
 それこそとも言う石田だった。
「天下の治世が駄目になります」
「そうじゃな、そこは小竹と同じじゃな」
「そういえば大納言様は今は」
「有馬の湯に行かせておる」
 大坂に近いそこにというのだ。
「近頃身体の調子が悪いとのことでな」
「左様ですか」
「それで今は大坂におらん」
 そうなっているというのだ。
「またすぐに戻って来るわ」
「お身体の調子も」
「必ずな、あ奴はわしより若い」
 何処か祈る様な顔になってだ、秀吉は石田に述べた。
「だからな」
「必ずですな」
「わしより長生きする、これから東国のこともある」
「だから余計にですな」
「あ奴には働いてもらわねばならん」
「天下人となってもまだ東国がある」
 そちらのことがというのだ。
「だからな」
「是非にですな」
「あの者にはこれからもじゃ」
「働いてもらうが為に」
「今は有馬で養生してもらっておる」 
 そこの湯でというのだ。
「じっくりとな」
「それはよきことです」
 石田は秀長の話を聞いて安心したかの様に述べた。
「身体を労わってこそです」
「ことを為せるな」
「はい、そしてそれは」
「わしもじゃな」
「そうです、関白様もです」
 石田は秀吉にも述べた。
「是非共です」
「養生を忘れぬことじゃな」
「まだ東国のことがあり天下を完全に統一しても」
「それからもじゃな」
「やるべきことは山の様にありますので」
 それ故にというのだ。
「くれぐれもです」
「身体を労わるべきじゃな」
「食するものも」
 それもというのだ。
「是非です」
「わかっておる、滋養のいい美味いものをたんと食おうぞ」
「今日もですな」
「そうする、今日は南蛮の料理を食する」
「といいますと」
「牛の肉を多くの野菜と共にじっくり煮た汁ものじゃ」
 それを食うというのだ。
「あちらの味付けをしたな」
「南蛮の汁ものですか」
「ビーフ
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