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54部分:ローゲの試練その八
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ローゲの試練その八

「とりあえずは勝ったな」
「はい」
 フルトヴェングラーがそれに応える。
「見事な勝利でした」
「思ったよりもな」
 ローエングリンもそれに応える。
「これも全て。ローゲの立てた作戦は」
 彼は言った。ミサイルによる攻撃も空母による艦載機での攻撃も全てローゲが出した戦術なのであった。ローエングリンはそれに従っただけであったのだ。
「見事なものだな。予想通りだ」
「ですな」
「まるで。人間の考えた戦術の様だ」
「人間の」
 参謀達はその言葉に応えた。
「そう、人間のだ。考える内容がコンピューターのものとは思えないが。どう思うか」
「言われてみれば」
 これは彼等も感じていることであった。
「この思考はコンピューターのものとは思えないものがあります」
「そうだな。柔軟性も尋常なものではない」
 彼は言った。
「今回の戦術は。老練の軍人でもそう出せはしないものだ」
「はい」
「しかもそれが数パターンも。コンピューターのものとは思えないな」
「生体コンピューターだからでしょうか」
 参謀の一人が問うた。
「脳を使っているという可能性は」
「脳を」
 それを聞いた一同の顔に不吉なものが走った。
「ミーメ博士ならば。有り得ると思いますが」
 その参謀は言った。
「生きた人間から脳を取り出し、それをコンピューターに転用する。有り得ることです」
「馬鹿を言え」
 だがそれはベームによって否定された。提督達も艦橋に集まっていたのだ。勝利を祝う為に。
「幾ら何でもそれはない」
「それは法によって禁止されていたな」
「いや、待て」
 クナッパーツブッシュも言った。だがここでローエングリンが口を開いた。
「生きた人間の脳をそのままコンピューターに転用したか」
「はい」
「ミーメなら有り得るかも知れない」
 彼も言った。
「話に聞いた通りの男ならな。有り得る」
「有り得ますか」
「そうだ。そして若しそれが本当なのだとしたら」
「はい」
「このローゲは。普通の者の脳を使ってはいない」
 ローエングリンのその言葉が不吉な色彩を帯びてきた。
「どう思うか」
「並の知恵者の頭脳ではないと」
 クナッパーツブッシュが問う。
「そうだ。これだけの戦術戦略を立てられるとなると」
「かっての軍にもそうはおりませんでしたな」
「一体誰の頭脳を使ったのか」
 謎は深まるばかりであった。だが今はそれだけに構ってはいられなかった。ローエングリンは戦後処理を行い捕虜を補量収容所に送り、破壊した艦艇のうち使用できそうなものを収納した。そして行政に取り掛かりまずは地盤を固めることにしたのであった。
 それから暫くは比較的平穏であった。周辺星系は進んで彼の下に集まり勢力は拡大してい
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