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強欲探偵インヴェスの事件簿
盗賊の前にモンスターの前菜を。
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 ガラガラと音を立てて、馬車の車輪が回る。御者台には二足歩行の猫らしき者が手綱を握り、幌のかかった荷台ではクッキーを抱いたミーアが座ったまま船を漕ぎ、その傍らではハリーが鎧を手入れしている。インヴェスはその様子を忌々しそうにチラチラ見ながらふて寝している。折角ミーアが無防備なのだからパックリ頂きたいと思ってはいるのだが、側にはハリーが貼り付いているし、何よりインヴェスにとっては最強の門番であるクッキーちゃんが抱きかかえられている。お陰でインヴェスはムラムラとイライラが混じり合って爆発寸前位に苛立っていた。

「ニャ〜……しっかし暑いニャア?」 

「昼間の砂漠だぞ?暑いに決まってる。そんなに暑けりゃその毛皮の着ぐるみ脱いだらどうだ?」

「ニャるほど、じゃあ遠慮なく……って、ニャーのこれは着ぐるみじゃねぇニャ!」

 インヴェスの毒舌にノリツッコミを決める猫。彼らは猫妖精……いわゆるケットシーと呼ばれる種族で、彼らいわく『ちょーぜつプリチィでお茶目な小悪魔系妖精』らしい。妖精のくせに悪魔なのかよ、というツッコミはノーセンキューとの事だ。彼らは人語を理解し、動物の扱いにも長けているし、肉球の手(前足?)であるにも関わらず手先が器用だった。その器用さを悪用して盗賊紛いの事をする手癖の悪い者もいるが、低コストで頼める御者やお手伝いさんとして一定の需要があった。何よりその愛くるしい見た目のお陰で、女性からの人気も高い。何より、

「上質なマタタビと干し魚頂いたから、文句ねぇけどニャ」

 チップの価値がモロに猫基準で、安上がりな所がインヴェスは気に入っていた。




 何故インヴェス一行が砂漠の上を馬車で移動中かと言えば、インヴェスが誘拐犯に当たりを付けたからこそだ。盗賊団『砂漠の蠍』はその名の通り砂漠を根城にした盗賊団で、主な獲物は砂漠を渡るキャラバンや商人だ。という事は獲物を品定めする為の斥候が街に潜んでおり、目星を付けた獲物の通るおおよそのルートを調べて仲間へと報せ、襲わせている可能性が高い。そう踏んだインヴェスはそこに目を付けた。『相手が此方の動向を探ってくれるのなら、逆手に取って狩ってやろう』と。ハリーとミーアにそう持ちかけて呆れられつつも、ミーアが自らの手で助け出したいと発言した為に方法はそれしかないかと納得され、砂漠の先にある街へと買い付けに行く商人に偽装するために馬車や積み荷、御者の手配等諸々の準備を整えて砂漠へと乗り出したのが2日前。御者のケットシーには事情を話してあるし、馬車といっても牽いているのは馬ではなく巨大なトカゲだったりするのだが。

 そんな風に馬車に揺られる事、2日。変化は突然やって来た。先程までのんびりと装備の手入れをしていたハリーが、ガチャガチャと装備を付け始めたのだ。まるで今すぐにでも戦闘
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