暁 〜小説投稿サイト〜
納戸婆
第三章
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 ダイアナはお店の中の納戸を見てだ、恵子に尋ねた。
「マスター、いいですか?」
「あっ、恵子でいいわよ」
 そこはとだ、恵子はダイアナに断った。
「マスターって店長さんってことだけれど」
「その呼び方では」
「大層だからね」
 そう呼ばれると、というのだ。
「だからね」
「いいですか」
「ええ、だから恵子でいいわ」
「ではミズ恵子ですか」
「さん付けにしてね」
「日本風にですね」
「それでお願いね」
 日本にいるからそうして欲しいというのだ。
「いいかしら」
「わかりました。では恵子さん」
 ダイアナは恵子にあらためて言った。
「あのお店の上の方にある小さな戸棚みたいなのは何ですか?」
「あれは納戸よ」
「納戸?」
「大阪とか日本の西の方では神様を祀ったりする場所なのよ」
「というと神棚ですか」
「そうしものよ」 
 そう考えていいというのだ。
「要するにね」
「そうですか」
「そう、それでこのお店でもね」
「神様を祀っていますか」
「ええ、あと何でもね」
 恵子はダイアナに納戸の話をさらにした。
「妖怪もいるとか」
「妖怪ですか」
「ええと、ダイアナさんイギリス生まれだから」
 恵子は彼女のその生まれのことから話した。
「妖精とかの話も多いわよね」
「幽霊の話もかなり」
 ダイアナは恵子にこう答えた。
「多いです」
「そうしたお話も多い国よね」
「もう国全体で、です」
「妖精や幽霊のお話が多かったわね」
「はい、それで妖怪は日本の」
「妖精みたいなものよ」
 まさにというのだ。
「強いて言うならね」
「そうなんですね」
「日本文学でも出て来るでしょ」
「はい、何か一杯出ていました」
 ダイアナもこう答えた。
「小泉八雲を読んだことがありますが」
「あの人の作品は妖怪や幽霊ばかりよね」
「怪談ですね」
 英語風に片仮名ではなく漢字読みであった。
「あの作品ではそうですね」
「そこで妖精みたいって思ったでしょ」
「妖怪のことを読んで」
「それが日本の妖怪なのよ」
「読んでいて何かと思いましたが」
 だがここでだ、ダイアナはわかったのだった。頭の中で別々になっていたものが一つになった感じだった。
「そういうことでしたか」
「そうなのよ」
「そうですか、ではあの納戸を開けると」
 ダイアナはその納戸を見つつさらに言った。
「妖怪が出てきますか」
「まさか。このお店にはいないでしょ」
「いえ、いるかも知れないですよ」
 普段とは違った興味津々の楽し気な笑みを浮かべてだ、ダイアナは恵子に言った。
「ちょっと開けてみますね」
「えっ、本当にそうするの?」
「妖怪が本当に出たら」
 そうなればとだ、ダイアナは楽し気に笑ったまま恵子
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ