第二章
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「これといったネタが出なくて」
「書けないの」
「ネタを必死に探してるけれど」
演劇部の方と同じくだ、今彼は暇さえあれば図書館でも本屋でもパソコンでもスマホでもネタを探していた。
だがそれでもだ、どうしてもなのだ。
「出ないんだよ」
「ネタが」
「それで書けないんだ」
「スランプなのね」
「もうここはね」
どうしてもと言う隼一郎だった。
「間に合わないとね」
「代理の子になの」
「書いて欲しいね」
「そんなにネタ出ないの」
「全くだよ」
文芸部の方と同じだった、このことは。
「何も出ないんだよ」
「それじゃあ脚本は」
「あともう少しで締め切りよね」
「そうよ」
杏は眉を曇らせて隼一郎に答えた。
「あんたも知っての通りね」
「そうだよね、けれどね」
「そのネタがなのね」
「出ないんだよ」
どうしてもというのだ。
「本当に困るよ」
「あんたが一番辛いでしょうね、けれどね」
「どうしてもだね」
「あんたが今うちの部で一番いい脚本書くし」
杏は隼一郎の脚本家としての資質を評価していた、それでこう言うのだった。
「そこを何とかよ」
「書くことだね」
「もう無理を承知で言ってるから」
「わかってるよ、けれどね」
書けないものは書けない、スランプでだ。隼一郎はこのことでも困っていた。彼は所属している二つの部活で壁にぶち当たっていた。
それでだ、本当に必死でネタを探していた。だがどうしてもネタが思い浮かばない。それで困り果てているとだ。
ふとだ、杏が彼にこんなことを言ってきた。
「ねえ、お願いしていかない?」
「ネタが出て書ける様に?」
「あんたあれよね」
わざわざ隼一郎のクラスに来て言ってきていた。青のブレザーと青と黒、白に赤のタートンチェックのミニスカートに白いブラウスと赤のリボンの制服がよく似合う。佳乃も同じ感じの制服だが胸にあるのは黒のネクタイだ。尚隼一郎は青のブレザーとグレーのズボンでネクタイは緑でブラウスは白だ。
「文芸部の方でもよね」
「ああ、知ってたんだ」
「ええ、スランプで書けないのよね」
「どっちもでね」
困り果てた顔での返事が何よりも雄弁に物語っていた。
「スランプでね」
「書けないのね、それじゃあね」
「お願い?」
「大阪の方に行って」
神戸にある八条学園からというのだ、隼一郎は姫路在住で杏は西宮だ。佳乃は明石に家がある。
「それでね」
「大阪?」
「そう、あそこ織田作之助さんとか川端康成さんも出て来たでしょ」
「それはね」
文芸部だけあって隼一郎もよく知っていることだ。
「そうだけれどね」
「あと井原西鶴さんとか上田秋成さんとか近松門左衛門さんとか」
「それでなんだ」
「こうした人達のお墓とかにお参り
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