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第百九話 シャロン・イーリスからの宣戦布告です。
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帝国暦488年3月7日――。

帝都オーディン郊外――。

広大な庭園で独り佇んでいるのがティアナだった。目を閉じ、意識を集中した彼女の身体から、赤いオーラが立ち上り、木々を照らし出していく。
(次は・・・・。)
ティアナは意識を集中しながら思う。次は自由惑星同盟への侵攻になる。これまでは帝国におけるローエングラム陣営の基盤強化の為に力を注いでいたが、これからは自由惑星同盟、正確に言えばシャロンと対峙することとなる。

かつての自分の指導教官を相手に戦うことについて、悩みがないといえば嘘になるが、だからこそティアナは鍛錬を行い、自らの意志と力を再構築することにここ最近日々を費やしていた。

その後ろ姿に歩み寄っている一人の人間がいた。ロイエンタールだ。

不意に、ロイエンタールがブラスターを構えた。冷笑が彼の眉をよぎり、指が引き絞られようとした。

直後、ティアナの手から放たれた閃光がロイエンタールをかすめ、背後の壁を爆散しても、彼は顔色一つ変えなかった。
「あまり、いい趣味とは言えんな。肩越しに狙い撃ちにする真似等、願い下げにしてもらいたいものだ。」
ロイエンタールがブラスターをしまった。
「どこがよ。背後から撃とうとなんかしちゃって。まぁ、本気じゃないことは知っていたけれど。」
「ところがお前は俺に手を出したな。」
「これでも手加減したのよ。・・・・手加減と言うレベルじゃないけれど。」
「ほう・・・?」
「あまり信じていないようだけれど――。」
ティアナが手を下ろしてロイエンタールの元に歩み寄ってきた。
「私たちがその気になれば、イゼルローン要塞のトールハンマーがブラスターに見えるほどのオーラを撃てるのよ。一発で帝都をオーディンごと原子の塵にすることも可能なの。これでも力を制御するのに苦労しているんだから。で、何か用?」
「使用人たちから苦情が来たのでな。不気味な赤い閃光を出すのは願い下げにしてもらいたいと。こうも言っていた。そのうち帝都中の人間がここにやってくるかもしれんとな。」
その言葉からすると、ティアナがここでこうして意識を集中しているのは初めてではないらしかった。
「そんなことを言いにやってきたわけじゃないでしょ?」
ロイエンタールは眼を細めた。冷笑が彼の顔から消え去った。
「ローエングラム公から呼び出しがあった。妙な通信が自由惑星同盟から入ってきていると。それも、繰り返しだ。お前ならこの意味は分かるのではないか?」
ティアナの手がぎゅっと握られた。
「シャロン・・・・。」
ロイエンタールの眼が細まる。彼もまたティアナから事情を聞いて知っている一人である。
「宣戦布告のファンファーレよ。」
ティアナの澄んだ声が木立に消えていった。


* * * * *
自治領主府――。
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