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越奥街道一軒茶屋
雷神の子
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 あっしが聞くと、その子は待ってましたと言わんばかりにあっしに詰め寄ってきたんでさぁ。

「やっぱり人が通れなくなってたんだな! ならオレに任せてよ。オレ、道塞いでた木をどかして来たんだ」

 普通に考えれば、何言ってんだって風に受け取りやす。でもここはバケモノとかがうようよいる越奥街道、とりあえず信じてみるのがあっしのやり方なんですよ。

 蛇を巻いた子が来たって方向の倒木を確かめてみると、本当に道が通れるようになってた。まるで持ち上げてそのまま動かしたみたいに、木が道のわきに寄せられてるんでさぁ。

 救世主っていうんですかい? この子はまさにそんな風に見えやした。
 あっしが頭下げて礼を言うと、照れ臭そうに頬を掻いてやしたね。

 どうやってどかしたのかってのも聞いたんですがね、曰く自分の手だけで全部動かしたらしいんでさぁ。
 地獄に仏、といった感じで、あっしは反対側の倒木もどかしてくれないかと頼んでみたら、快く引き受けてくれやした。

 この少年、見るからに人間離れしていやすが、言動がどうも人間臭い。ぱっと見じゃ人なのかそうじゃないのかわからないんですよ。
 流石にバケモノなのかとは聞けないんで、この辺にバケモノが多いことを話してみやした。軽いカマかけってやつでさぁ。

「バケモノ……。オレもそう言われたことあったぞ。ちゃんと父さんと母さんのいる人なんだけどな」

 少年の声に嘘はないように聞こえやした。
 これをきっかけに、少年の過去をある程度聞き出す事ができたんですよ。なんでも昔、空から雷神が落ちてきて、それを少年の親が助けたんだとか。その礼で、少年はこんな怪力を持って生まれてきた、と。

「そん時丁度、村の寺に鬼が出るとかって話があって、オレが退治に名乗りでたんだよ。こんなバカ力、そういう時くらいしか人に認めてもらえないだろ? それでオレは鬼を退治して、その後も寺にいたんだ」

「じゃあ、何で今はこうやって旅をしてるんですかい?」

「色々あって寺が焼けちまったんだ。オレの居た村、平和そのものって感じだったから、もっと別の場所でオレのバカ力が使えねえかなって」

 なんか、子供に見えないのはあっしだけでしょうかね。しっかりしてるというか、ませてるというか……。

 話が進んだところで、倒木のところに到着しやした。早速お手並み拝見といった感じでさぁ。

 少年はちょっと気合を入れると、あっと言う間に折り重なった倒木を運んでいきやした。例えば何かデカい建物を建てる時、大工が柱を運びやすが、そんな様子で、自分の身長の何倍もある木をどかしていく。感心しかありやせんでした。
 少年は、十分もかからないくらいの速さで倒木を全部片づけちまいやした。

「本当に助かりやした……」

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