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越奥街道一軒茶屋
砧と狸 狸の日記
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るから、しっかりしまっておかないと」

 みたいに言って、他のものもどんどん片していったの。
 バケモノは、おいら達みたいなバケモノ仲間の気配にすぐ気が付くって兄ちゃんが言ってた。だからおいら、やばいと思ったんだ。そんな奴が来るなら、きっと兄ちゃんの居場所に気づいちゃう。そうなると兄ちゃんはどうなるか……。

 月もなくて、どんより曇ってて、風がなにかのうなりごえ見たいに吹いてくる。本当にヤバい奴が来てるんだ、兄ちゃんを助けなきゃって思って、おいら、人間の兄ちゃんが寝るのを待って、下に降りたんだ。

 音をたてないように、抜き足差し足で箱に近づいていった。箱を見たんだけど、やっぱり鍵がかかってる。人間の兄ちゃんがどこに鍵を隠したのか見てなかったから、場所もさっぱりわからない。

 しょうがないから、箱の中の兄ちゃんに声をかけてみたんだ。
 やっぱり兄ちゃんもすごく慌ててて、声が震えてた。

 手あたり次第に鍵を探そう、って思って、振り返ったんだ。

 そこに、人間の兄ちゃんが立ってた。

――

 人間の兄ちゃん、すっげー優しい人だった!
 イタズラをしたおいら達を捕まえたんだから、殴ったり、けったりしてもおいら達は文句言えない。でも兄ちゃんは、

「目ぇつけたのがあっしで良かったなあ」

 って、頭撫でるだけだったの!
 しかも、今度来てくれたらちゃんとお菓子で歓迎するとも言ってくれた!
 人間ってちょっと怖いと思ってたけど、この兄ちゃんなら普通に姿を見せて遊びに行っても平気、だと思う。

 兄ちゃんもおいらとおんなじ風に思ってるみたいだったから、今度何かおみやげ持って遊びに行ってみよう!
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