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おぢばにおかえり
28部分:第五話 彩華ラーメンその五

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第五話 彩華ラーメンその五

「今が一番大事だから。だからここでよかったら別にいいんだ」
「だったらいいけれど。それでも」
 ここでまた気になることが一つ。
「その大事なことって何?」
「それは内緒」
 けれどそれは言いませんでした。
「悪いけれどね」
「何か気になるわね」
「気にしない気にしない」
 笑って誤魔化してきました。
「大したことじゃないしね」
「大事なことなのに?」
 変な話ですよね。大事なことだって言うのに大したことじゃないって。
「どういうことよ、それって」
「まあそれは食べながら」
 ここで注文していたラーメンが来ました。新一君は特大で私は並です。それを比べるだけでかなりの違いがあります。お店の人も間違えることなく私の前に並を置きます。
「それじゃあ」
「うん」
 私がいただきますの音頭を取りました。手を合わせて。
「いただきます」
「いただきます」
 手を二回叩きます。天理教のいただきますです。
 それからラーメンを食べはじめますが新一君の食べっぷりと言ったら。やっぱり高校生の男の子なんだなって思います。
「よく食べるわね」
「ラーメン好きだし」
「いえ、ラーメンだけじゃなくて」
 それを本人にも言います。
「他のを食べる時もそうじゃない」
「そうかな」
「そうよ。けれどそれがいいわ」
 自分でも少し笑ってるのがわかりました。
「見てる方が気持ちよくなって」
「気持ちよく?」
「美味しそうに食べるからよ」
 そう言ってあげました。
「だからね。私も」
「そうなんだ。それよりも先輩」
「何?」
「早く食べないと」
 こう私に言ってきました。
「のびちゃうよ、麺が」
「あっ、そうね」
 言われてこっちもやっと気付きました。
「先輩食べるの遅いし」
「そうかしら」
 その自覚はないですけれど。そもそも新一君って食べるのかなり早いから。あまりどころか全然噛んじゃいないんじゃないかなって思っています。
「だからさ。早く早く」
「わかったわ。それじゃあ」
 それを言われてラーメンを食べます。コシがあって美味しいです。
 そこに新一君が。
「はいっ」
 どかっとした感じで私のラーメンにおろし大蒜を入れてきました。
「ちょっと」
 あんまり多かったんで。麺を食べながら顔を顰めさせました。
「入れ過ぎでしょ」
「気にしない気にしない」
 またこの言葉です。
「僕なんかもっと入れてるし」
「そういう問題じゃないでしょ」
 そんなに入れたら後で。
「喉が渇くし匂いだって」
「いいじゃない。僕だってそうなんだし」
「よくないわよ」
 新一君はいいでしょうけれど私が困るんです。

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