123部分:第十七話 梅雨ですその一
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
第十七話 梅雨ですその一
梅雨です
遂に梅雨です。休みがない六月です。高校に入ってこの六月のしんどさを痛感しました。
おぢばはとても暑いです。盆地なので暑さがこもります。それで大変な目に遭います。冬服から夏服に衣替えしてもその暑さは健在っていう状況です。
その暑さの中で起きて参拝して学校に行って。それだけでもう充分な暑さです。
「暑いわねえ」
「ほんと」
そんな話を教室で皆でします。それで気が晴れるわけじゃありませんけれどそれでも話をせずにはいられないというのが本当のところなんです。
そんな話をしているところに。男の子の一人が。
「あのさ」
「何かあったの?」
「ああ、ここ扇風機あるだろ」
「ええ」
天理高校の校舎には扇風機があります。教室の上に二つずつです。青い昔ながらの扇風機がちゃんと置かれているんです。
「俺それ他の学校の奴に話したんだよ」
「他の学校?あっ」
ここで私はあることに気付きました。それは。
「そうだったわね。それはね」
「公立だとそんなのないだろ」
「ええ、まあ」
そうなんです。私中学も私立だったから気付かなかったですけれどそうですよね。普通の学校には扇風機なんてないんですね。天理高校はそれがあるだけでも随分と違います。
「贅沢言うなって怒られたよ」
「そうよね、やっぱり」
言われて納得です。実はこの男の子は自宅生なんで他の学校の子とも付き合いがあるんです。寮にいるとそのことも忘れてしまいます。
「ふそくになるわよね、やっぱり」
「ああ、ふそくって言うんだ」
おみちの言葉にもまだ慣れていない感じです。それもわかります。
「そういえばそうか。こういうのって」
「そうなのよ。そうよねえ」
自分で自分に納得しだしました。私だけで。
「天理高校って随分恵まれているのね」
「滅茶苦茶恵まれていると思うよ」
彼にも言われました。
「設備なんかも凄いしさ。俺田舎の中学校から来たからよくわかるよ」
「田舎?」
「奈良だよ」
何か奈良県は田舎らしいです。私のイメージでは違うんですけれど。
「奈良の田舎なんだよ」
「そんなに田舎なの?」
「鹿出るぞ」
それって奈良じゃ当たり前なんじゃないでしょうか。奈良県っていえば鹿ですよね。私にはそんなイメージがあるんですけれど。あの大人しくて可愛い鹿ってイメージです。
「あの憎たらしいな」
「鹿が憎たらしいの?」
「滅茶苦茶憎たらしいよ」
顔を歪めてこう言ってきました。
「あんなの。奈良公園のだけでも腹が立つのに」
「そんなに嫌いなの」
「嫌いだよ。当然じゃないか」
当然とまで言っています。本当に何があったんでしょうか。
それでついつい気になって。
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ