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エアツェルング・フォン・ザイン
そのじゅうきゅう
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一刻ほど歩いてようやく到着した。

「ここが今、俺が世話になってる所だ」

「ここがお兄様のお家?」

「今のところはな」

コンコン

「アリスー!居るかー?」

うーん…ま、いいか

「入るぞー!」

数十センチだけ浮いてドアノブを捻る。

「アリスー?」

中を見るとアリスが机に突っ伏していた。

「なんだよ、また徹夜で人形作ってたのかよ…」

しょうがないなぁ…と思いながら毛布を掛けてやる。

「その人はだぁれ?」

ん?

「この家の家主だ」

「変態…子供の振りして取り入ったんですか…」

「おい、居眠り門番、それはあんまりだろ。
アリスには事情を一から十まで話したっつーの」

この門番は事ある毎に俺をディスらないと気が済まないんだろうか?

「うぅん…」

あー起こしちゃったか…

「ざいん?」

「おう、帰ったぞ。つーかお前また徹夜で人gy…」

「ザイン!」

「おぅあ!?」

アリスに抱き締められた。

泣きながら…

「えーと…アリス?」

「よかった…よかった…貴方が戻って来てくれて…
貴方が何時まで経っても帰ってこないから…」

あー、そっか…

「ごめんな、アリス。ちょっと色々あってぶっ倒れてな…」

流石に『一度死んだ』とは言えない。

「大丈夫なの?」

「ああ、問題無い」

アリスの頭を撫でる。サラサラしてて気持ちいい。

「うわー、恋人放っぽって妹様とイチャイチャしたんですか、クズですね」

黙ってろ居眠り門番。

「だれ?」

「異変の主犯の妹とその護衛の居眠り門番」

……………ジャキン!

一瞬にしてアリスの周りに夥しい数の人形が展開された、ランスとシールドを装備した戦闘仕様だ。

「あー、待て待て、アリス。主犯はもう倒したから大丈夫だ。
居眠り門番はともかくフランは何もしないよ。
な、フラン」

「うん!」

フランの笑顔に毒気を抜かれたのかアリスは警戒を一段下げた。

美鈴?しらんな。

「そっちの…赤毛の女は大丈夫なの?」

と剣呑な光を湛えた視線を美鈴に向ける。

「私は紅美鈴と申します。そこのロリコンショタ野郎については今すぐにでもブチ殺したいですね」

シャキン…

アリスが再び人形を操る。

「大丈夫、コイツは少なくとも今は俺に手を出せんよ」

そしてアリスを奥の方へ引っ張る。

「なによ?」

「美鈴の事はおちょくった俺が悪いから気にするな。
悪い奴じゃぁねぇんだ」

流石の俺も少しは悪いと思っているのだ。

「その言葉、信じていいんでしょうね?」

「オフコース」


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