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儚き想い、されど永遠の想い
99部分:第九話 知られたものその五
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第九話 知られたものその五

「恋愛は幸せになってこそだと」
「道ならぬ恋でなければです」
「では。ロミオとジュリエットは」
 彼等はどうかとだ。義正は彼等の話もするのだった。
「幸せになるべきだったんだね」
「その通りです。両家の対立なぞです」
「そんなものはというのだね」」
「はい、無視すればよかったのです」 
 そうだったというのだ。彼はだ。
「むしろ二人が結ばれれば」
「両家の対立は消えていたかな」
「下らない対立でした」 
 ロミオの家とジュリエットの家の対立はだ。佐藤にとってみればそうだというのだ。
 無論佐藤もだ。物語の事情はわかっていた。それについても話した。
「皇帝派と教皇派ですね」
「当時のイタリアはそれぞれ別れていたんだったね」
「神聖ローマ皇帝とローマ教皇の双方に」
「欧州の歴史は複雑だからね」
 義正はこのことも学んでいた。欧州のその歴史のこともだ。
「実にね」
「はい、全くです」
「その皇帝と教皇の話も」
「確かに政治的対立はありました」
 それは間違いなかった。だがそれだけではないこともだ。佐藤は見抜いていた。物語を読んでいてそのことも悟ったのである。
「ですがそれでもです」
「意地かな、あったのは」
「そちらの方が大きかったです。両家共です」
「多分に意固地になっていたね」
「それが為に厄介なことになっていました」
 そうなっていたと話すのである。
「そんなものは無意味です」
「そんなものは無視をすればよかった」
「よかったのですが」
「しかしそれができるのはです」
 どうかと話す彼等だった。
「勇気がいります」
「勇気がだね」
「はい、勇気がいりました」
 そうだったというのである。佐藤はそのことも話した。
「ですが逆に言えばです」
「二人は勇気があれば」
「最後の場面は慎重にあるべきですが」
「その前はだね」
「はい、勇気が必要でした」
 佐藤は話すうちに悲しい顔になっていた。そのうえでの言葉だった。
「ですがそれができなく」
「悲劇になったね」
「悲しいことにです」
「勇気。恋愛にも必要だね」
「何ごとにも必要ですが」
「恋愛についても」
「勇気といいますと何か武張ったものがありますが」
 それでもだというのだ。佐藤は言葉を変えていくのだった。
「それは決して武ではありません」
「孔子だったかな。それは」
「そうです。勇は何に対しても重要ですから」
 こんな話をしてだった。義正は考えを巡らせていくのだった。
 そうした中でだ。彼はこう佐藤に話した。
「わかったよ。それではね」
「それでは?」
「僕も勇気を身に着けないとね」
 こう言ったのである。
「何ごとに対しても」
「そうされますか」

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