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ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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〜白猫と黒蝶の即興曲〜
交わらない点:Point before#1
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としたバックアップがあるが、そうした一時データはパソコンのキャッシュ消去のように再起動ごとに消去されるのである。

仮に再起動したとして、そこに起き上がる《彼女》は、以前の生活の中で吸収したクセというべき微々たる習慣を失っている。それは果たして、死ぬということと違うだろうか。

ギシリ、と握りしめた携帯端末のフレームが不穏な悲鳴を響かせる。

―――あの子は、あの顔は!あなたの娘だろう!?

思わず漏れかけたその叫びは、しかし吐かれることなくグッと抑え込まれる。

鋭二にそんなことを言う資格はない。他ならない、この人の前では。

守れなかった。

その理由一つで。

「……分かりました。お騒がせしてすみません」

『まったくだ。今日は経産省も同席する、四月に向けた大事な会なんだ。小学生じゃないんだから、キミも自分でできる範囲のことは自分で解決すべきじゃないのかね』

「はい……」

消え入るような声でそう言いながら、鋭二は通信を切る。

これは苦手意識ではない。自分の中にある罪悪感から、彼に対してはいつも一歩引いてしまうのだ。

鋭二はしばしの間、携帯を握りしめながら、双眸を枯葉色の前髪の向こうに伏せる。

本来ならば、重村に罵倒されても仕方ないことを自分はしている。

侮蔑され、軽蔑され、唾棄される。

あの少女を――――彼の娘が死んだ理由の一端を担っているのだから。

だから、この胸の痛みは必然だ。

自分が背負うべき、一生を賭して償うべき十字架なのだから。

「……………………」

だらん、と。

知らず、力が入っていた全身を弛緩し、鋭二は教授に言われた通りに、《彼女》を管理するサーバーと繋がるラップトップPCに向き合う。

自分がどんな表情を浮かべているのか。それさえ分からずに、薄暗い研究室の中で青年は静かにキーボードに指を走らせた。
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