暁 〜小説投稿サイト〜
筒井筒〜白泉オリジナルバージョン〜
原文
[1/3]

前書き [1] 最後 [2]次話
 昔、田舎わたらひしける人の子ども、井のもとに出いでて遊びけるを、

 (昔、田舎まわりの行商などをしていた人の子供達は、井戸の辺りに出て遊んでいたが、)





 おとなになりにければ、男も女も恥ぢかはしてありけれど、


 
 (大人になったので、男も女も互いに恥ずかしがっていたけれど、)





 男はこの女をこそ得めと思ふ。



 (男はこの女こそを自分の妻にしたいと思った。)





 女はこの男をと思ひつつ、親のあはすれども、聞かでなむありける。



 (女もこの男を(夫にしたいと)思い続けて、親は(他の男と)結婚させようとするけれども、聞き入れないでいた。)





 さて、この隣の男のもとより、かくなむ、



 (そして、この隣の男のところから、このように(歌を送ってきた)、)





 筒井筒  井筒にかけし  まろがたけ  過ぎにけらしな  妹いも見ざるまに


 
 (筒型の井戸の井筒と背比べをした私の背丈も(井筒の高さを)超えてしまったようだよ。いとしいあなたに会わないうちに。)





 女、返し、



 (女は、返歌を)





 くらべこし  振り分け髪も  肩過ぎぬ  君ならずして  たれか上あぐべき


 
((あなたと長さを)比べ合って来た私の振り分け髪も、肩よりも長くなりました。あなたではなくて、誰のためにこの髪を結い上げましょうか。(いえ、あなた以外いません。))





 など言ひ言ひて、つひに本意(ほい)のごとくあひにけり。



 (などと、互いに歌の詠んで、とうとうかねてからの願い通り結婚した。)





(2)



 さて、年ごろ経ふるほどに、女、親なく、頼りなくなるままに、



 (そして、数年たつうちに、女は親を亡くし、生活の頼りとなるところを失うにつれて、)





 もろともに言ふかひなくてあらむやはとて、



 ((男は、女と)一緒に、どうしようもなくみじめに暮らしていられようか(、いや、よくない、)と思って、)





 河内の国高安(たかやす)(こおり)に、行き通ふ所出いで来きにけり。



 (河内の国の高安の郡に、通って行く(女の)所ができてしまった。)
 




 さりけれど、



 (そうではあったけれど、)





 このもとの女、悪しと思へるけしきもなくて、出だしやりければ、



 (このもと
前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ