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歌集「冬寂月」
二十六

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 氷雨降る

  冬そ纏いし

    野辺の風

 春ぞ待ちける

     花見月かな



 もう春も近いと言うのに、初冬のような霙混じりの氷雨が降る…。

 風も冬そのもののように冷たく…まるで春を拒むかのようだ…。

 三月…故郷は未だ雪の中…。

 想い思うは…未練か…。



 もの思ふ

  夕の帷の

    枯れ野原

 人とばかりに

    侘しさぞ増す



 夕暮れの紅い陽射し…あれこれと物思いに耽ってしまう…。

 夕に染まる枯れた野原は静まり返り…まるで誰かをじっと待ち続けているように思えて…。

 私が人ゆえか…こんなにも侘しく思ってしまうのは…。


 こんなにも淋しいと思ってしまうのは…。




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