暁 〜小説投稿サイト〜
いたくないっ!
第五章 じょじょじょ
[2/17]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
庭へ。

 神の高等テクニックを披露しようとも、いかんせん元の体力がない。さしたる距離など走っていないというのに、彼らはみな、すっかりバテバテで、ゴール直前のマラソン選手のような苦悶の顔になっていた。

 はひい、はひい、と犬の咳のような呼気を吐き出しながら、なんとか前へ進む定夫。
 惨めさと死への恐怖にすっかり涙目であった。

 背後からぱたぱたと足音。

「ちょっとお話したいだけなんですうう!」

 女子がなんかわけの分からないこといってる。

「がああああああああ」
「あああああ」
「ひいいいいいいい」

 腕をぶんぶん振り(その割に速度は出ていないが)、必死に走る三人。

「待ってくださあい!」

 背後から、女子生徒がぴったりついてくる。

 捕まって、たまるか。
 おれは、
 おれたちは……
 生きる!

 定夫は、残る力を振り絞って、走る速度を上げた。

 と、その瞬間、
 激しく転倒していた。

 三人、もつれあうように、どどっと。
 砂場にさしかかっていたことに気付かずに、足を取られてしまったのだ。

 口の中に、はねた砂が入った。
 昨日降った雨のために濡れていた重い砂が、水底の藻のように彼らの身体をからめとった。

「うぐううう」
「まあああ!」

 三人は、みな必死の形相で、這いつくばり、
 からみあうように。
 押しのけ合うように、
 神にすがるように手を伸ばし、
 身体をくねらせ、
 なおも逃げ、進む。

 いや、進もうと頑張っているだけで、湿った砂をただ手でかいているだけ。
 砂まみれ、泥まみれの、実に酷い有様であった。

 這いつくばったまま、顔を起こして後ろを振り返った定夫は、ひっ、と息を飲んだ。
 余裕で追いついた女子生徒が、彼らのすぐ足元に立っていたのである。

 定夫は、涙をぼろぼろ流し、泣いていた。

「もう、もう勘弁してくださあああい!」

 泣き叫びながら、なおも砂をじゃりじゃりかいて進もうとする、抗おうとする。

 定夫だけではない。
 トゲリン、八王子、
 我助かろうと三人は押しのけ合いながら、涙を流し、絶叫し、手で、足で、砂をかき続ける。
 まさに阿鼻叫喚の地獄絵図であった。

「助けてくださあい!」
「トーテムキライザーーー!」

 泣き叫ぶ八王子とトゲリン。

「たっ、助けるって、なにをですか? そもそも、どうして逃げるんですかあ!」

 女子も、少し息が上がってしまっているのか、それとも単にイラついているのか、興奮したような声を出した。

「じょ、じょん、じょじょっ、じょしっ、女子にっ、ははぱぱぱぱぱなしかけられると思ってなかったむでえええ!」

 
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ