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白い雨
第三章

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 三崎は任務が終わると必ず次の日は何処かの孤児院に行った、そこで彼が得たボーナスで買ったお菓子やおもちゃを子供達にあげていた。
 そして彼等と共に遊んだ、この日は雨だったが。
 窓から見える雨を見つつだ、彼は子供達に孤児院の中で言った。
「今日はお部屋の中で遊ぼうね」
「うん、そうしよう」
「今日はね」
「楽しくね」
 表情はないがこう言ってだ、彼は子供達と共に遊んだ。
 そしてだ、ふとだった。
 その雨、孤児院の建物が白いせいか白く見えるその雨を見つつだ。三崎は子供達にこんなことを言った。
「お兄さんにはお姉ちゃんがいたんだ」
「お姉ちゃんがいたんだ」
「そうだったんだ」
「うん、いつも守って可愛がってもらっていたんだ」
 子供達にこのことを話した。
「そうして雨の日はね」
「こうしてなんだ」
「お部屋の中でお姉ちゃんと遊んでいたんだ」
「そうだったんだ」
「そうだよ、覚えているんだ」
 人のことは長く覚えられない、しかし姉のことだけは特別でこのことも覚えているのだ。
「ずっとね」
「そうなんだ」
「お姉ちゃんのこと覚えているんだ」
「そうなんだね」
「こうして遊んでいたんだ」
 子供達に話した。
「雨の日はずっとね」
「じゃあ今はだね」
「お兄さんが僕達と遊んでくれるんだね」
「お兄さんのお姉ちゃんみたいに」
「そうしてくれるんだね」
「そうさせてもらうよ、僕は姉さんみたいに優しく出来ないけれど」
 自分ではこう思っている、彼の中で姉は何処までも優しく暖かい存在だったからこそ。
「それでもね」
「うん、じゃあね」
「一緒に遊ぼう」
「僕達とね」
「そうしよう」
「うん、今日は皆で楽しく遊ぼう」 
 三崎は自分の心の中にあるものを感じた、それはとても小さいがそれでいてこれ以上はないまでに暖かいものだった。
「雨だけれど暖かくね」
「そうしようね」
「楽しくね」
「外は雨だけれど」
「お兄さんがお姉ちゃんになってね」 
 子供達は三崎に言った、自分といつも遊んでくれる彼に。彼等にとっては三崎は何処までも優しく暖かいお兄さんだった。三崎はこのことに気付いていないがそうだった。彼はそのことに気付かないままこの日は子供達と遊んだのだった。姉と共に見た白い雨を見ながら。


白い雨   完


                 2018・2・25
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