二章 ペンフィールドのホムンクルス
1話 宮城愛(2)
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ていた。
箸を握り直す。そして、愛に目をやる。彼女は無表情でご飯を食べていた。その横の大皿には最後の唐揚げが一つ。
優の眼が怪しく光った。
「そおいっ!」
優の箸が高速で愛の唐揚げに向かう。訓練によって鍛えられた過去最速の動きだった。
次の瞬間、食堂中に鋭い音が響き渡った。
「なん……だと……」
優は絶句した。優の放った高速の箸は、愛の箸によって動きを封じられていたのだ。
「この僕が負けるなんて……」
割りとノリノリである。
愛はそれを無視し、澄ました顔で最後の唐揚げに箸をのばした。
その様子を悔しそうに見ていた優が何かに気付いたようにぽつりと呟く。
「あ、これって間接キス? と言うか間接的な間接キスかな」
その瞬間、愛の顔がぼふっという擬音が似合うほど一気に赤面した。
それを見た優は、新しいおもちゃを見つけた子どものように、ぱっと目を輝かせた。
◇◆◇
京子は急ぎ足で食堂に入った。
愛と優を二人っきりにしたのは失敗だった。きっと気まずい沈黙が流れているに違いない。
京子は心の中で謝り、愛たちを捜そうと席を見渡した。二人はすぐに見つかった。だが、様子がおかしい。二人はテーブルの上で手を握り合い、愛は恥ずかしそうに顔を背けていた。
不審に思いながらも近づく。しかし、不穏な言葉が流れてきた。
「愛ちゃん……愛してるよ」
「あんたは何で公共の場で愛を囁いてんのっ!?」
京子が詰め寄り、首根っこを掴むと優が慌てて弁解を始める。
「ち、ちがっ! 反応が面白かったからつい悪のりして!」
「あんたねえ……っ!」
「悪気はなかったんです! ごめんなさい!」
優がおずおずと、京子の反応をうかがうようにこちらを見やる。
「愛ちゃんが無視するから相手して欲しくて……」
上目使いで寂しそうな顔をする優。優は幼い顔つきながらも、整った顔立ちをしている。少なくとも、京子の知るどんな男性よりも。
京子は優を見てうめいた。頬が僅かに赤く染まる。クリーンヒットだった。そして、京子は無意識に口を開いた。
「……許す」
桜井優。彼は割りと何でも許される最強のESP能力者である。
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