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Raison d'etre
一章 救世主
16話 佐藤詩織(3)
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根拠もなく信じられた。
「…っん……」
 優が寝返りを打った。毛布がずれて、優の上半身が露になる。
 詩織は息を呑んだ。優の体には無数の傷があった。新しい傷ではない。とても古い傷が全身にに広がっている。火傷のようなものが一番多かった。
 医療用ナノマシンによって、自然治癒が働いている箇所は既に回復している。と言うことは、この傷は特殊戦術中隊に入る以前に出来たものと推測できる。
 詩織は優を見た。まだ幼い、天使のよう寝顔を見て、詩織は胸が熱くなるのを感じた。
 ――――まさか、先輩も私のように――――
 何があったのかは分からない。しかし、きっと優は周りが期待するような、強い少年ではないのかもしれない。
 そして、詩織は何故優をすんなりと受け入れられたのかわかった気がした。
 ――私と似ているんだ。
 詩織はそっと幼い少年の前髪を撫でた。
「んっ……」
 優がゆっくりと目を開ける。
「気分はいかがですか?」
「わっ!……佐藤さん?」
 優が驚いたように声をあげる。
「意外そうな反応、ですね」
「いやっ、そういう意味じゃなくて……でも、何でっ?」
 優が混乱したような声をあげる。詩織はその様子を見て頬を緩めた。
「騒ぐと体に障りますよ」
 詩織の注意で、優が幾分かの落ち着きを取り戻す。
「でも……大丈夫なの……?」
 遠慮がちに優がたずねる。何が言いたいかすぐに理解して詩織は、はっきりと頷いた。
「はい。もう大丈夫です」
「……そっか」
 優が安心したようにそう答えた時、ノックの音が鳴った。
 優が返事する間もなく扉が開く。すぐに、優が驚きの声をあげた。
「上田中将!」
 出てきたのは体格の良い男だった。白色が混じる無精髭を撫でて、怪我はどうだ、と口を開く。
 詩織が立ち上がって椅子を譲ると、悪いね、と上田中将は椅子に腰かけた。詩織が恐縮したように壁際に寄る。
「さて、疲れてるだろうが、いくつか聞きたいことがある。良いかな?」
「はい」
 優の返事に上田中将は満足そうに頷いた。
「君がESP能力者と接触した、と聞いた。それは間違いないね?」
 詩織が戸惑ったように優を見る。優は詩織の視線に気付かずに、頷いた。
「はい」
「ESP能力者の名前は分かるかな?」
「いいえ」
 そうか、と呟いて、上田は一枚の写真を取り出した。
「君が接触したのは、この女の子かい?」
 詩織の位置からは写真が見えなかった。しかし、優が頷くのは見えた。
「はい。間違いありません」
「この子と何を話した? つまり、彼女の行方の手がかりとなるようなことは――」
「何も話していません」
「どんな小さなことでも何か手がかりに繋
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