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Raison d'etre
一章 救世主
14話 広瀬理沙(4)
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だせば良い」
 奈々は眉を寄せた。
「その攻撃自体が、痕跡となって残るでしょう?」
「ああ。だから囮を使おうと考えている。特定省庁付近のメタファイルに異常なアクセスを送って、別件のように見せかける。これで暫く連中の注意は他へ向かうだろう。その間に、防諜部を使って自治体に圧力をかければいい」
 悪くない考えだ、と奈々は評価を下した。リスクはゼロではないが、最善の手に思える。
「じゃあ、後は貴方に任せましょう。慎重にね」
 了解、と準が答える。
 司令室から出ていく準の背中を見送りながら、奈々は優が状況を正しく把握していることを祈った。

◇◆◇

「その代わり、逃走をお手伝いします」
 にこりと笑みを浮かべた優に、理沙の瞳に宿った警戒の光が色濃くなる。罠を疑っているのだろう。
 優は理沙が何か考えるより先に、後ろ手に縛られた両手にESPエネルギーを込めてロープを切断し、立ちあがった。
 立ちあがった優を見て、理沙が刃物を構えようとする。優は理沙が行動を起こすより先にポケットから財布を取り出した。不可解な優の行動に、理沙の動きが止まる。
「これ、逃走資金にどうぞ」
 そう言って、いくつかのカードだけ抜き取った財布を理沙の足もとに放り投げる。
「何のつもり?」
 理沙は足元の財布を一瞥してから、警戒するように一歩下がった。
「逃走資金です。それと、今から全方位にESPエネルギーを放って、SIAの探知手段に対して撹乱をしてみます。軍の探知能力が喪失している間に、遠くへ逃げてください」
 その言葉で、理沙の瞳に理解の色が浮かんだ。
「私を逃がす代わりに、お前を逃がせってこと?」
 優は頷いて、廃ビルの窓に目を向けた。遠くからESPエネルギーの気配。亡霊。早く戻った方が良い気がした。
「そうです。亡霊が出てきているみたいで、そろそろ戻らないといけないです」
 理沙はじっと優を見つめた後、小さく舌打ちした。
「ああ。オーケイ。お前の事情は理解した。嘘を言っているようにも見えない。信用してやる。ただし変な動き見せたら、殺すぞ」
 理沙はそう言って、足元に転がったままだった財布を拾い、中を確認する。
「つーか、あんたはそれでいいわけ? 逃がすだけじゃなくて、撹乱なんてしたら立場悪くなるだろ?」
「いえ、これで立場が悪くなるのは広瀬さんの方です」
 優は窓の向こうを見つめたまま口を開いた。
「探知されたESPエネルギーの波形から、撹乱手段を行ったのが僕であることはすぐにわかります。ですから、撹乱手段の対象は軍ではなく広瀬さんであったとします。つまり、僕は広瀬さんと戦闘状態に陥り、離脱するために撹乱手段を用いたというストーリーにします。ということは、広瀬さんには僕、つま
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