一章 救世主
11話 広瀬理沙
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ながらにしてESP能力者であるわけではなかった。幼少時代から深く刻み込まれた倫理観、社会感覚がそうした事に対して、彼女たちに強烈なタブー意識をもたせている。しかし、それは酷く不安定な、曖昧なものだった。
少なくとも、現時点で一人の少女はタブーを侵し、ESP能力者の持つ優位性に気づいてしまった。原因はどうであれ、彼女が自身の行動を正当化するような思想を持つ場合や、優位性に気付いて増長してしまった場合は、再びESP能力を行使する危険性がある。当面の間、警戒が必要だ。
憂鬱な表情を浮かべ、奈々は再び時計に目をやった。時間だけが過ぎていく。
現在、戦略情報局と警視庁が秘密裏に広瀬理沙を殺人の容疑で捜索している。戦略情報局はやり方が過激だ。優も一連の騒動に巻き込まれたのではないか、と不安が募る。個人端末に備え付けられた測位システムも機能していない。
奈々は唇を噛んだ。優が戦略情報局ではなく、件のESP能力者と偶然接触したなら更に問題だ。
ESP能力を一般人に向ける、という発想に触れること自体が危うい事だ。思想的な汚染がないか、徹底的に洗われるだろう。自衛軍はともかく、戦略情報局は統合幕僚監部から独立した機構だ。自衛軍のように文民の監督を受けずに国内での作戦を立案する事が認められている。身内である亡霊対策室にとっても戦略情報局は脅威になりうる。
まだ優の失踪は統合幕僚本部に報告していない。今帰ってきたら何とか内部で誤魔化す事ができるのだが、これ以上長引けば隠しきれない。
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