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名探偵と料理人
第二十三話 -浪花の連続殺人事件-
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方針を決めて数週間、明美さんは男性時には「辻本夏」と名乗ることになった。傷も癒え、日常生活を送れるようになった。流石に20数年生きてきた性別と違う体は慣れず、物語であるような(トイレを間違える、女言葉になるなどの)失敗が続いた。そして――

「え?買い物帰りに哀ちゃんに会った?」
「そうなのy……なんだよ。横を向いたときの顔を後ろから見られたらしくて。顔立ちは私のままだから『お姉ちゃん!!』って呼ばれちゃって。つい後ろを振り向いたら小さな志保と同じく吃驚しているコナン君と……他にお友達かな?三人の子供と一緒にいたわ……いたんだ」
「今は家ですし言葉は戻してもいいんじゃないですか?」
「いや、男の時は変えないといつまで経っても変な顔されちゃうからね」

向き合えば、今日来ているのはタンクトップにジャケットだし男性だというのが分かるだろう。喉仏も出ているし声も低い。だけど明美さんの言う通り顔立ちはそこまで変化してないから短髪にしているとはいえ後ろから見れば勘違い(事実だけど)するか。一応哀ちゃんの事はちらっと見ていたりしていたので動揺しないように気を付けて、当たり障りのない事を話して別れたそうだ。ただ、新ちゃんはどうも納得していない、哀ちゃんはどうにも悲痛な顔をしていたそうだ。

「そうですか……もし、近所で会うようなことがあればここに住み込みで働いていることは別に話してもいいですよ。流石に何度も会って親交を深めて隠すのは不自然ですしね。ただ「辻本夏」として…ですよ?もしかしたら死にたがっている彼女もいい方向に行くかもしれませんし。明美さんにはつらいかも知れませんが…」
「いいの?勿論正体を明かせないのはつらいけど近くであの子を見れるのなら…あ、でもたしかに下手なことを言わないようにしないといけないのは大変かな」
「気を付けてくださいね。あの子たちは頭がいい。ちょっとしたことで気づいてしまうかもしれないですからね。まあ、一緒に風呂でも入れば疑念は払拭できるでしょうが」
「えっと……そこまでは。あはは…そ、それより!そろそろ私の体も復調してきたしそろそろ訓練をお願いしても大丈夫かな?志保の様子を聞くに早ければ早い方がいいだろうし」

そう、哀ちゃんが生きることに前向きでない傾向があるんじゃないかと新ちゃんが言っていた。そのことを伝えた時の明美さんは自責の念と決意の秘めた複雑な表情していた。今もその時と同じ顔をしている。

「あー。実はですね。寝たきりだったリハビリと、傷の回復そしてドクターフィッシュによる肉体改造はあらかた無事に終わっています。なので今日からでも戦闘面について指導していこうと思っていたのですが……」
「ですが?」
「実は明日から家を離れることになってしまいました。なので戦闘訓練は帰ってきてからということで……」

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