暁 〜小説投稿サイト〜
遊戯王GX〜鉄砲水の四方山話〜
ターン87 鉄砲水と紫毒の記憶
[1/26]

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話
「何の用だい?こんな辺鄙な場所に」

 どこかの部屋。電気すらついていない部屋の中で、その主が荒れ果てた部屋の中を手で指し示しながら愉快そうに来客に尋ねる。尋ねられたその人影はしかしそれには答えず、返答代わりに無言で主へ向けて右手をかざす。
 部屋の主がその行動に不信を抱き何かアクションを起こそうとしたのだとしても、それはあまりにも遅すぎた。その右手と連動しているかのように頭に内部から割れるような痛みが走り、立つことも喋ることもままならずその場にうずくまって頭を抱える。辛うじて開いた視界に、手をかざした側の足が見えた。突然の行動にもまるで反応することなく、1歩ずつゆっくりと向かってくる。

「う……!」

 それでも距離を取ろうとしてどうにか体を反転させ、そのまま腕を前に出して這ってでもこの場を離れようとする。だがその両腕を頭から離した瞬間、より一層の痛みが彼の脳内で弾けた。またしてもその手を自らの頭部に戻し、赤ん坊のように丸まった状態でその場に転がり続ける事しかできない部屋の主の元にたどり着いた人影は、次にその手を腰につけられたデュエリストの証、デッキケースに伸ばす。倒れたままの部屋の主には目もくれずその中から1枚のカードを探り当てた人影は、何も言わずにその1枚を再びデッキへと戻す。それはかろうじて理解できたものの、どうすることもできない部屋の主に侵入者が一声囁く。

「これでいい。だが今起きたこと、そしてお前の正体はもう少し後、その時が来るまで忘れるがいい。全てはダークネスのために……」

 その言葉を最後に、侵入者が踵を返す。あまりの痛みに耐えかねた部屋の主が意識を失う寸前まで見ていたものは、その侵入者の黒いブーツだった。それが名をトゥルーマン、通称ミスターTと呼ばれる存在であったことは、知る由もない。





 森の中にひっそりとたたずむ、かつて特待生のためという触れ込みで作られた廃寮。この場所から三幻魔の研究の結果として吹雪さんが次元を飛ばされ、いまだ行方知らずの本物の藤原優介もダークネスの世界へと旅立っていった、デュエルアカデミアの暗部。この場所には、何の因果か入学当初から僕も深く関わってきた。そんなこの場所に、この緊急事態に訪れることになろうとは。三沢の考えることはさっぱりわからないけれど、ここに入るのならあの人に一言声をかけておく方がいいだろう。

「稲石さーん、ちょっとちょっとー」

 大声で呼びかけるも、廃寮の地縛霊から返事はない。いつもならたとえ返事がなくとも、こちらの声が聞こえた証拠に門がポルターガイストでひとりでに開いて道を開けてくれるはずだ。けれど、今日は閉ざされて錆びついたうえに蔦まで絡みついたこの門はそれが当然と言わんばかりに閉ざされたままでピクリとも動こうとしない。仕方がないので構
[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ