アルバイトで自分自身に遭遇した大学生
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皆は、「馬鹿と鋏は使いよう」と言って、彼を軽蔑していたのだ。
早速、南森町の大阪営業所に行く、と彼は言った。彼の車に乗るよう指示されたので行ってみると、僕を含め四名だけだった。
他の人達は、いつの間にか【フケ】ていた。
僕を含めた四人は、馬鹿デカイくいかにも趣味が悪い、淡い色のグリーンのべンツの後部座席に、ギュウギュウに身を詰められ乗せられた。常にホーンを鳴らしハンドルを切りまくり、人が近くにいようが平気で、スピードを落とすことなく乱暴極まる運転で大阪営業所に無事着いたのが不思議なくらいであった。可哀そうに、二人は青い顔をして道端で苦しそうにゲロゲロ……と吐いていた。
面接者は大阪営業所の所長であり、着ている背広は淡い色のグリーンだ。
車の色に合しているのか、背広に車を合わせているのか? 後になって聞いたのだが、誰も知らないらしい。
大阪営業所は、大阪府大阪市北区にある真新しいビルの五階にあった。
我々の上司となる人物は、坊主頭で態度が非常にデカイ。しかし、やや神経質そうな面立ちをしている三十歳位の男で、我々の課長だ。彼の本職は、お寺の住職だそうだ。
その課長に引き渡されて、その日から四日間オリエンテーションなる講義と受けた。その後、朝から晩まで、我々は壁に向かって接客マニュアルを大声出しての棒読みと、ロールプレイイングに終始した。
簡単に仕事の内容を説明すると、課長以下の人が、様々な企業の営業部長または、小さな個人事務所では直接社長に会う。その場でCD蓄音器のデモンストレーションのアポをとる。数名〜数十人の前で、課長がCD蓄音器の素晴らしさについて、実際にCDを使って説明する。アポを取り付けた我々がローン申込書を配布する。契約一人の時はアポを取った人の成績である。二人契約の時は、一人ずつの成績となる。三人契約の時は二つの契約が、アポを取った人の成績となる。つまり、早く課長になって自分でアポを取りプレイをすれば、契約は全て自分の収入となる。フルコミのため基本給はなしで、契約一つにつき五万円の報酬になる。だが、実際に古くからいる人に聞くと、三つ契約を取るのが精一杯らしい。
翌日から、僕は、地下鉄御堂筋線沿い≪ちかてつみどうすじせんぞい≫にしらみつぶしに――カッコよく言えば、ローラー作戦を行い――様々な企業を訪問して一日に四〜六つのアポを獲得したのだ。一日当たりの報酬は二十万円をキープできたので、月給は三百万円を軽く超えた。
当然、大阪営業所どころか全国総代理店で常に一〜三位の成績であった。若干二十一歳のアルバイトではあったが、入社後わずか二カ月で課長となって、十三名を部下に持った。
僕は、毎日――どうしても、出席しなければならない授業のある日は休んだ――車で待機し、部下のアポでプレイをした。
その
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