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第2話 王国の内憂
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ありません」


 若き偉丈夫が反論するものの、口々に諫められ悔しそうに黙り込む。彼こそが王太子ガルミウスであり、今回のレニングラード奇襲を企図した張本人だった。


 現国王ダリウスは文治の王である。先代と先々代が武断の王であり、小国だったアルメイラの版図を一気に広げた。広大な領土を引き継いだダリウスは武勇にこそ優れなかったものの、内政の才に秀でていた。急速な拡大によって生まれた国内の歪を取り除くことに腐心し、半ば成功しているといってよい。
 その功績は先代と比較しても劣らない。


 だが、それを分からないものもいる。武断の王が二代も続いたのだ。その家臣たちも必然武断的になっており、内政を優先させる国王を弱腰と声高に批判したのである。


 見識ある者たちは、ダリウスの手腕を高く評価していたが、それは少数派だった。飴と鞭で巧みに反対派を分断しやりこめたあたり、ダリウスは決して内政だけの人ではない。しかし、それを台無しにしたものがいる。


 ――――王太子のガルミウスだった。


 若く威風堂々とした佇まい。軍才に秀で正しく先代の血を引いていた。半面、驕り高ぶり慢心する傾向にあり、ダリウスにはまだまだ未熟と思えた。
 そのガルミウスは、父であるダリウスの治世を惰弱と批判し、公然と敵対し始めたのである。


 愚かなことだとダリウスは思う。ガルミウスはダリウス唯一の男子であり、後継者争いとは無縁なのだ。黙っていれば至尊の座が転がり込んでくるのだからなぜ悪戯に騒ぎを起こすのか。
 その危うさを危惧しているからこそ、ダリウスは息子に王座を譲っていないのだが、当のガルミウスは気づいていなかった。父を権力の座にしがみつく俗物と断じていたのである。


 急拡大した領土はダリウスの治世で繁栄し、その国力を飛躍的に高めた。南部で国境を接する帝政連盟との決戦に備え軍事力を高めていたのである。
 帝政連盟は後継者争いに揺れ、帝国は内乱の兆しがあり、連合は斜陽である。


 このままつつがなくガルミウスが引継ぎ、その軍才を思うままに発揮すれば、王国は大陸に覇を唱えることができたかもしれない。
 事実それだけの素地は整っていたし、ダリウスと側近たちはその青写真を描けていた。しかしながら、ガルミウスたちにとっては、あまりに迂遠すぎ理解されることはなかったのである。


「クロフォード卿の意見を聞こう」

「"竜母" による初めての実戦で慣れなかったのです。荒れ海を越える航海で疲弊してしまい満足な実力を発揮できなかった。まさに悲劇といえましょう」


 竜母とは開発されたばかりの新兵器である。巨大な船に竜舎と滑走路を設けただけだが、それは革命的な発想といえた。海戦でも上陸作戦でも活躍するだろうと期待さ
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