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提督はただ一度唱和する
過ごした時間
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る暇はない。
「陸軍さんが受け入れを承諾してくれた。んやが、偶然おったっちゅう、中隊しか派遣出来んのやと。緊急で大湊からも増援が来る。問題は足が足りんことや。雪やからな。海岸線でうちらを回収すんのがやっと。艦載機に狙われて逃げんのなら、海をいった方がマシや。陸軍さんに迷惑もかからん」
「網走より向こうに上陸されたらしまいや。本気で春まで手が出せんようになる」
「手前では捕まる。陸軍さんも援護出来ん」
「足止めがいるな。それもとびきりの」
「追い詰めた猫を食い殺すほどのな」
「可愛い龍驤ちゃんには無理やな。他を当たって」
 付き合っている暇はないので締めておいた。米神を。
「冗談やんか」
「ほな、ツッコミは本望やろ」
「うち、大阪人やないし」
「負け戦でナイーブになっとる指揮官相手に、キミ、ええ度胸やな?」
 ヒステリー起こすでと、脅したら黙った。心持ち、周りの艦娘も距離を置いている。おそらく、連装砲を取り出したのが悪かったのだろう。
「持っていき。かき集めてきた」
「ヤニが欲しいな」
 それの由来も、連装砲の意味も問わず、彼女はそれだけを要求した。薄い上にすぐ剥げる妖精さんの着せる衣装も、防水に関わる限りは評価出来る。ほとんど残っていなかったが、一本だけ咥えて押し付けた。顔を寄せ合って飛沫を避け、火をつける。
「ヤツら、また艦載機を繰り出してこん」
「わかっとる。今度はうちらが釣り餌や」
 海上の索敵は、広さ故の途方もない困難がある。深海棲艦は基本的に空母が偵察機を載せないため、その点では優位に立っていた。偵察機を失うと、重巡や戦艦は砲撃戦で不利になるため、運用に慎重なのだ。また、それ以外の索敵手段が人類側より優秀であることも理由にあり、戦闘開始まで深海棲艦が艦載機を繰り出してこないことは、常識になっていた。
 それでも、直掩さえ置かないのは腑に落ちなかったが、狙われた今では骨身に沁みている。
「責任を押し付けるようやが」
「言いな。うちらは死んでも死なん。また造るか、拾うかや。何より、陸軍さんがおらな勝てん」
 まったく同じような顔で、同じ考えを共有して、二人は頷いた。互いを焼き付けるように見つめ合えば、第二がくしゃりと笑う。
「うちら随分、スレたよなぁ」
 何のことか。
 ここには、二人以外にも龍驤がいる。視線を投げれば、びくつく者、影に隠れる者、見つめ返す者、様々な龍驤がいる。そして、煙草を咥えて、憎まれ口を叩く、戦友がいた。
 確かに、時間が二人を変えたのだろう。目の前の彼女と出会ったときの自分は、こうではなかった。そう、あれは何年前か。
 第五も笑った。惜しまれて逝ける。それがこんなにも嬉しい。
「可愛いかったんよな、うちら。ちっとも知らなんだわ」
 横須賀鎮守府第五提督室所属、軽空母龍驤は
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