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提督はただ一度唱和する
苦悩の果てに来たる
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かった過去を、不器用に語った。そして、新城に何故なのか尋ねた。ぬいぐるみだと思っていたものが、彼女の武装であると知った新城は、彼女の衣装をぼんやりと見つめながら、島風と彼女の提督に対して心から同情した。連装砲ちゃんとやらは、柔らかかった。これらはほんの一例だ。
 新城にとってよいこともあった。
 霞は新城を見かけるたびに突撃してきた。艦娘特有の気安いどころか、攻撃的な調子だったが、不思議なことに不快感はなかった。言葉遣いに目を瞑れば、彼女の意見は誰よりも実質に則していたからだ。
 まず、彼女は新城の意図を確認した。訓練を行う意義がどこにあるのか。この先の展望に、艦娘はどの程度関わっているのか。どこまでやってよいか。何をしてはいけないのか。
 摩耶や古鷹は彼女らの精神的支柱だが、実際のまとめ役は彼女のようだ。それに今まで気がつかなかったのは、一重に彼女が自分を下士官として規定していたからだ。普段は二人を立て、常日頃から駆逐艦を統率して、問題がないように先回りしていた。他の駆逐艦を新城にけしかけたのも、彼女であるらしい。
「私たちって、元々は道具じゃない? だから、現状は不本意なのよ。誰かの役に立てないってのは」
 つまり自己同一性を欠き、不安定な状態らしい。確かに危険だとわかった。稚内に残った艦娘たちを思い出す。
 無意味であったとは思わない。だが、必要ではなかった。あのとき、口にしたことに嘘はない。稚内は北端の監視施設に付随する、小規模な集落だった。避難は全て陸軍で面倒が見れた。新城ほど徹底していないが、深海棲艦に渡すものなどほとんど残さなかった。
 消極的な自殺と、新城は判断した。これを隣でやられると、戦場では苦労する。
「止めなかったのか?」
 言葉に出して後悔した。そんなはずがないではないか。
 だが、霞は新城の浅はかさを鼻で笑った。
「私たち、女だから」
 彼女たちの死は、新城の想像を遥かに越えて無駄だった。深海棲艦と唯一、互角に戦える兵器が艦娘だ。このようになる前は、大戦での献身を称えられない艦はなかった。
 霞は新城の腰を叩くと、歩き去った。新城は猪口を呼んだ。
 新城は西田と猪口に艦娘を仮想深海棲艦として、演習を行うよう検討させた。統裁官は彼自身が行った。小隊の人間は簡単に死んだ。艦娘は連戦連勝だ。
 艦娘は移動しながらでも射撃出来る。人間には不可能だ。砲は生半な遮蔽など粉砕した。前装式は彼女らの装甲を打ち抜けず、それ以外に当たるかは運だった。
 演習に参加する小隊が増えた。新城が摩耶をけしかけた。大隊長に呼び出されたが、無関係を装った。大隊長は追求しなかった。
 霞が再びやって来て、身の上話をした。彼女を喚びだした提督は素人に毛も生えていなかった。彼女は彼を鍛えようと思った。後任に、雷が来た。彼女はここにい
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