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提督はただ一度唱和する
残酷な現実
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しかわかっていない。数は限りないほどだが、総数は推測すら難しい。
 このまま彼女らとの戦争が継続し、外国との交流もなく、全ての軍事技術が陳腐化した状態で、戦国時代よろしく抵抗し、人類を存続させたとしよう。
 その時、人類は文明を維持出来ているのだろうか。
 もしも、戦って戦って死力を振り絞った果ての果てに、滅びることも出来ないのだとしたら。
 人類は、彼女らに食糧生産を担う家畜として、飼われているだけなのかも知れない。


                     §


 新城は四国の生まれである。どこの街の生まれなのか、年齢でさえ正確ではない。なおえという名前だけが、彼が唯一自分のものと認識する全てである。
 運のよいことに権力者に拾われ、不自由ない暮らしを与えられた。新城という姓も与えられ、一家を持つに至った。愛情とも無縁であったとは思わない。感謝すべきであろうことは、新城もわかっている。実際、義父と義兄に抱く気持ちはまさにそれであるといえる。慕ってもいる。
 それでも、自分という人間を考えるとき、環境が人を作るということを思わずにはいられない。周囲からの影響、その一切から自由であるなどと思い込めるほど、傲慢になれないからだ。後は、生まれついた気質であろう。
 つまり、彼は誰を恨むことも許されていないのだった。何よりも自分自身が、それを許せそうになかった。彼にも信ずるべき何かがあるということだ。それは良心の発露であり、彼の長所であった。だからこそ、彼は苦しんだ。
 新城は艦娘の管理を、大隊長より達せられた。本来、統合幕僚本部直轄である彼女らを指揮する権限は、北海道に駐屯する誰の手にもない。故に管理なのだが、飯を食わせて寝床を確保する以外に何をすればよいのか、見当もつかなかった。強力な兵器であるだけでなく、年頃の娘である彼女らにどう接すればよいのか。
 もしも義父に連絡が取れて相談してみた所で、直ちに解決出来るとは思えなかった。いや、この場合は義兄がよいだろうか。義姉では自分が叱られるだけだろう。女性というのはとかく厄介で、謎に満ちている。
 なるほど、だから負けているのか。
 唐突な理解だったが、的外れとも思えなかった。世界の真実を発見したかのようだ。気分がよくなった。だから、新城は再び現実と相対することにした。最早、無視し続けることが難しくなっていた。
「資材を寄越せ。あたしたちは前線に行く」
 何を言っているのだろうか。理解を拒む脳味噌を、新城は何とか働かせた。彼女らには、待機の命が達せられているはずである。
「君らには、既に待機せよという命令が下っているはずだ」
 確認は大事な作業だ。日本の軍人は、自衛隊と呼ばれていた頃から、確認こそが最も重要であると叩き込まれている。確認し、念を押さなければ。それは一種
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