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儚き想い、されど永遠の想い
24部分:第二話 離れない想いその九
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第二話 離れない想いその九

「この二人のうちの二人です」
「上司にも友人にも同僚にも部下にも持ちたくない二人だね」
「どの位置にいても何時足元をすくわれたうえで全てを奪われるかわかりません」
 そうした意味で実に悪魔的な者達であったのだ。
「ですがその言葉はです」
「確かだね」
「はい、それが珈琲です」
 まさにそれだというのである。
「それが珈琲なのです」
「そうだね、本当にね」
「では。またあのお店に行かれますか」
「そうさせてもらうよ。またね」
「はい、ではまた」
「さて、それじゃあ」
 珈琲の話からだ。さらにであった。
 彼はだ。また言うのであった。
「屋敷に帰るけれど」
「電車に乗られますか」
「車を借りるのもいいけれど」
 タクシーのことだ。この頃にはもう大きな街には普及していた。
「ここはね。電車でゆっくりとね」
「帰られますか」
「そうしよう。それじゃあね」
「はい、駅に」
 こう話してだ。そのうえでだった。
 二人は駅に向かう。そうして電車に乗る。その中でだ。
 彼は見たのだ。彼女を。彼女がそこにいたのだ。
「あれは」
「まずいですね」
 佐藤がだ。暗い顔で義正に述べた。
「これは」
「白杜家のお嬢様だね」
「はい、白杜理恵さんです」
 佐藤がこの名前を出した。
「あの方がです」
「この車両に乗っているなんてね」
「予想していませんでした」
 佐藤は話す。そしてだ。
 義正は彼女のその顔を見ていた。彼女は彼等には気付いていない。
 見れば女子学生が着る様な服である。青い袴に黒い革靴、それにえんじ色と白の振袖である。髪を奇麗に結っている。その格好は。
「今流行の格好ですね」
 佐藤が述べた。
「似合ってはいますね」
「そうだね」
 その通りだった。その目の前にいる彼女はだ。
 隣にいる女友達と何か話をしている。その女友達も彼女と同じ格好だ。色は違うがだ。
 その真理の横顔を見ることになった。するとだ。
 その顔を見てだ。また言うのであった。
「あの顔は」
「あの顔は?」
「いや、何でもないよ」
 思わず見惚れてしまった。しかしそれは言わないのだった。
 そのうえでだ。佐藤に対してだ。あらためてこう言うのだった。
「行こうか」
「他の車両にですね」
「うん、八条家と白杜家はね」
 一瞬だが寂しげな顔になる。しかしそれはすぐに消してまた言うのだった。
「一緒にいてはならないね」
「御互いに。いがみ合う間柄ですのね」
「だからだね。それでだね」
「はい、ですから」
「うん、移ろう」
 義正は言った。
「それじゃあね」
「それでは。前を通るのもあれですし」
 それでは同じだった。姿を見られてしまう。そうなっては元
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