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大阪の塗り壁
第三章

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「不思議ですよね」
「ええ、見間違えとはね」
「思えないですよね」
「ご主人飲んでなかったのよね」
「素面でしたよ」
「そうよね」
「ましてこうした冗談とか言わないですし」
 香菜の夫はというのだ。
「それに主人嘘は言わないですから」
「嘘にしてもね」
「変ですよね」
「ええ、かなり不自然よ」
 詩織もどうかという顔で香菜に答えた。
「私が聞いてもね」
「そうですよね」
「不思議なお話ね」
「何なんでしょうか」
「わからないわね」
「ちょっとおかしなお話過ぎて」
「どうにもね」
 詩織はこの時はこう言うだけだった、それで自分のパートに出てだった。帰ってから夕食を作って夫を待っていると。
 帰って来た夫にだ、こう言われたのだった。
「団地に入ってすぐにおかしなもの見付けたよ」
「この集合団地の場所になの」
「うん、壁をね」
「壁って」
 詩織は夫の言葉を聞いて香菜が話したことを思い出した、そうしながら夫の話を聞きつつ夕食の鳥鍋の用意をした。もう野菜も鶏肉も豆腐も切っていた。この日は寒かったので鍋にすることにしたのだ。
「それはまた」
「おかしいよね」
「ええ、壁がなの」
「一号団地の方の道にあったんだよ」
「一号の」
「そうだよ、そこで見たんだよ」
 鍋の用意をする妻に話すのだった。
「これがね」
「おかしな話ね」
「何なんだろうね」
「じゃあね」
「じゃあ?」
「食べ終わってから一号団地の方に行く?」
「それで壁があるかどうか」
「確かめない?」
「それじゃあ」
 夫は出そうとした焼酎を止めて妻に応えた。
「今は飲まないで」
「それでよね」
「一緒に行こうか」
「食べ終わったら十時位かしら」
 詩織は壁の時計を見た、今は九時丁度だった。
「じゃあね」
「その時にね」
「一号の方に行きましょう」
「それじゃあね」
 夫は妻の言葉に頷いた、そしてだった。 
 二人で鍋を食べ終わってから一号団地の方に行った、するとそこにはなく何と集合団地全体の入り口の方にだった。
 壁はあった、それで詩織はおやという顔になって夫に言った。
「あの壁?」
「うん、あの壁だよ」
 夫もその壁を見て妻に答えた。高さ五メートルで横は入り口を完全に塞ぐ位のものの壁だった。
「あの壁があったんだ」
「一号団地の方の道に」
「そうだったんだ、そこでは道を塞ぐ位の幅だったけれど」
「今は入り口を塞いでるわね」
「それ位だね」
「幅が変ってるのかしら」
「そうかな、とにかくどんな壁か」
 夫は妻に話した。
「見に行こうか」
「それじゃあね」
 詩織は夫に応えて夫婦で壁を見に言った、すると二人が壁の手前まで来るとまさに煙と共にであった。
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