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儚き想い、されど永遠の想い
175部分:第十四話 忍び寄るもの一
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第十四話 忍び寄るもの一

                  第十四話  忍び寄るもの
 義正と真理の話をだ。八条家の総帥、即ち義正達の父が話を聞いたのは。東京から帰ってからだった。
 その話を聞いた彼とその妻はだ。まずはこう言ったのだった。
 義愛によく似た顔立ちのだ。恰幅のいい初老の男だ。見事な地味な色の和服を着ていてそれがよく似合う。その彼がだ。妻を横に置き静かに言うのだった。
「信じられんな」
「全くです」
 彼の隣にいる義智に何処かにた感じの穏やかな赤の系統の着物の女性も言う。黒髪を綺麗にあげて纏めている。あまり歳を感じさせない気品のある女性だ。
 見れば二人を合わせた感じにだ。義正はなっている。その二人がだ。義愛と義智の話を受けてだ。そうしてそのうえで言うのだった。
「白杜家の末娘とか」
「結婚したいというのですか」
「はい、そうです」
「その通りです」
 二人はだ。自分達の両親に話した。場は八条家の屋敷だ。そこで話すのだった。
「既にそのことはです」
「公に言っています」
「そうか」
 ここまで聞いてだ。父は静かに言った。重みのある確かな声だ。
「しかもこのことはか」
「はい、伊上先生もです」
「認めて下さっています」
「姑息と言えば姑息だな」
 父はまずはこう言って息子の行動を批判した。
「あの方の御力をお借りするとはな」
「あの方からです」
「申し出られたのです」
「そうなったか」
 その話を聞いてだ。父はだ。
 表情を少し変えた。そうしてこんなことを言った。
「考えたものだ」
「これは策でしょうか」
「策だな」
 そうだとだ。妻にも話す。
「まさにそれだ」
「あまりよくはありませんか」
「いや、この場合は妥当だ」
「妥当ですか」
「むしろよくやった」
 義正をだ。褒め称える言葉さえ出して評するのだった。
「ここはそうするのが一番だった」
「伊上先生の御力をお借りすることがですか」
「一人や二人ではどうにもならない場合があるな」
「はい」
 そのことは母もわかtっていた。世の中というものはそうしたものだ。一人、そして二人ではだ。思うようにならないことも多いのだ。
 その話になりだ。彼女も頷いて己の夫に話すのだった。
「そしてその場合はです」
「他から力を借りる」
「我が国もそうでしたし」
「何故我が国が露西亜に勝てたか」
 話は日露戦争のものになった。二人の中ではあの戦争のことはまだ記憶に新しい。日本にとって運命の、その存亡を賭けた戦いだったからだ。
 その戦いに何故勝てたか。彼は話すのだった。
「英吉利の力があってこそだ」
「あの英吉利の」
「英吉利が我が国と同盟を結び力を貸してくれた」
 露西亜には戦争をしていなくともだ。
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