3話→中学2年A
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「じゃあ、また来るからなー」
「お兄ちゃんバイバイー」
一人分の焼きそばをタッパーにつめて、織斑家を後にする。
笑顔で見送ってくれる後で、千冬も手をちょこちょこ振っているのが見えた。
ツンデレめ。
行きに比べ、随分と軽くなったバッグ片手に、にやりと笑いながら、次の目的地に足を運ぶ。
さて、次は寂しがりやのウサギの面倒でも見に行くか。
篠ノ之神社。
敷地内に剣術道場のある、かなり大きな神社である。
実際、夏には的屋が店を連ねるくらいには全国的にも有名らしく、何度か行ったこともある。
だが、今日ここに来たのは別に神社にお参りに来るためではない。
勝手知ったる敷地内の篠ノ之家の住居のインターホンを押す。
大して時間も立たずに応答の声が返される。
「太郎か。いつもすまない。束は離れにいる」
この声は親父さんか。
やっぱりまだ束の奴は親が苦手なのか。
篠ノ之 柳韻(しののの りゅういん)。
恐らく、初見で漢字が読める奴が皆無な名前な人である。
という、ジョークは置いといて、俺の悪友、篠ノ之束とその妹の親父さんで、俺の一応、師匠にあたる人である。
武術の師匠をやってる人にありがちな、自分にも他人にも厳しいタイプ。
でも決して理不尽ではない。
俺が路上で無手で絡まれた場合の対処を聞いたら、わざわざ時間をとって教えてくれるなど、厳格なのは確かなんだが、良い師匠だ。
だから何故束が苦手としているか未だに謎である。
まあ、好んで喧嘩したい訳じゃないからこっちからは聞かないが。
短い謝罪と労いの声と共にインターホンが切れる。
さて、行きますか。
勝手知ったる篠ノ之家。
門を開け、迷うことなく束のいる離れに一直線に向かう。
流石に神社本体よりは住居は広くない。目的地には直ぐについた。
さて、流石に大丈夫だと思うが、束が作業中で巻き込み事故食らっても馬鹿らしい。
時代を感じさせる離れのドアを軽くノックする。
「もしもーし、いつもの差し入れ持ってきたぞ。今日は焼きそばだ」
「わーい、入って〜」
いつも通り気の抜ける声と共に、了承の意が返ってくる。
その声に合わせてドアノブをひねる。
音を立てて開く扉の先には、いつも通りの束がいた。
自作の丈の短いエプロンドレスに、俺と千冬が「好きな動物は?」と聞かれた時に答えたウサギのカチューシャ。
一般的に見て余りにも奇抜な服装だが、顔が良く、スタイルもメリハリのある束が着ると、ある種の美があった。
まあ、変な事は、変なんだが。
挨拶もそこそこに、バッグから焼きそばを取り出して渡す。
「ほらよ。今日のお昼だ。約束は
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