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提督はBarにいる・外伝
加賀の恐怖体験・4
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った瞬間、加賀は頭から氷水をバケツでぶっかけられたように意識がハッキリと覚醒した。突き刺さる詰めたい視線に我を取り戻し、三を翻して逃げようとした……が、既に手遅れだった。

「きゃっ……!?」

 背後から飛び掛かってきた何かに押し倒され、身動きが録れなくなる加賀。身体を起こそうとするが、その背中にある小さな感触とは裏腹に、大きすぎる力で押さえ付けられて動けない。首だけを捻って背中に乗っている存在が何かを確認する。それは、所々喰われて欠落しているが、間違いなく赤城だった。

「………………!!」

 声にならない悲鳴を上げている間に、提督が加賀の側へと近寄ってきていた。

「あ〜ぁ、バレちまったよ。クク……くはははは!」

 口を三日月型に歪め、ケラケラと嗤いながら覚束ない足取りで近付いてくるその様は、明らかに正気ではない。その姿は、正に狂人と形容する他無かった。

「…………っ!……っ!」

 抜け出そうと必死に身体を捩る加賀の側に、提督がしゃがみこんで顔を覗き込む。先程まで狂ったように嗤っていたはずのその顔は、一切の感情が抜け落ちたかのように無表情。まるで能面のようだ。

「た、助けて……!」

「見ちまった、な、ぁ?」

 加賀の涙ながらの命乞い等、聞こえてすらいないとばかりに喋る提督。喋り方がおかしい。アクセントや発音が滅茶苦茶だ。まるで機械で無理矢理作ったかのような音声。目の前の存在は、提督であるどころか人間ですらないのではないか?と加賀は思った。

「ダメなんだよ?  ミちまった、のな、ら、ねぇ?」 

 提督がダメなら荒木か憲兵の方にと加賀は視線を送るが、2人は興味も無い、と言った具合に見向きもしない。


「ミちまっっっっッッッッッた、のなら……ねぇ?ねぇ?」

「消さねぇとよ」

 いつもの提督のトーンで、『消さねぇとよ』と、そう言った。そう言いながら、提督はポケットから蛍光色の液体が詰まった注射器を取り出した。その、何の薬品なのかも解らない物が詰まった注射器を向けられる事が、今加賀にとっての最大の恐怖だった。どうにか逃げ出そうともがく加賀を尻目に、背中に膝を当てて動けなくしている赤城と、左手で注射器を持ち、右手で加賀の顎を押さえて顔を固定する提督。どうやら、注射器を加賀の眼球に突き立てるつもりらしい。



「ダメだよ?ダメだよ?ダメだよ?ミちゃったんなら消さねぇと、消さねぇと、消さねぇと、消さねぇと消さねぇと消さねぇと消さねぇと消さねぇと」

 壊れたラジオか何かのように、繰り返し同じ言葉を呟く提督。譫言のように口を動かしながらも、左手の注射器はゆっくりと加賀の右目に迫ってくる。

「い……いやっ、あぁっ、あああぁぁぁぁあぁぁ!だれっ、誰かっ!やだっ、誰か
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