暁 〜小説投稿サイト〜
フルメタル・アクションヒーローズ
第170話 地下室に眠るバイク
[3/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
も早く久水先輩の谷間から、一枚の写真が取り出されたのだった。
 俺の目を塞ぐことを忘れ、写真に意識を奪われてしまった矢村は、その中に映されている光景を目の当たりにして……絶句するのだった。

 写真に映っているのは、赤いビキニ姿でみずみずしい肢体を強調している、妙齢の美女。外見だけで判断するなら、三十代前半くらいに当たるのだろうか。
 艶やかな茶色のロングヘアーやエメラルドグリーンの瞳など、確かに久水に通じる特徴が見受けられる。あの巨峰も、母譲りだったようだ。

 ……だが、三十代では計算が合わない。久水先輩の兄の茂さんは、今年で二十歳を迎えるからだ。
 それに久水先輩は以前、俺に話したことがある。

 ――あと十年も経たないうちに還暦を迎える両親は、一日でも早く孫を見たがっている、と。

「ぐっはぁあぁああぁあッ!」
「ちょ、矢村っ!?」

 その現実という名の一撃が、よほど強烈だったのだろうか。矢村は白目を剥いて血を吐くと、もんどりうって倒れてしまった。

「……大丈夫。命に別状はない。それより、そろそろ先輩はお姉ちゃんを起こしに行ってあげて……」
「ハァ……心配ないわ、龍太君。これ、いつものことだから」
「いつものことなんだ!?」

 たまに俺以外の部員と女子生徒達で、女子会を開いているという話を聞いたことがあったが……その時も、こんな調子だったのだろうか。
 矢村に限ってそんなことはないと思っていたが……これは、貧血の心配もしなくちゃならないな。

 部室の隅に置かれているソファーへ矢村を運ぶ、救芽井と四郷。その背中をしばらく眺めてから、俺は指示された通りに地下室へ向かう。
 テーブル下に隠された秘密の扉を開く先には、底の見えない暗闇が広がっていた。この先で、我が着鎧甲冑部の顧問は人の気も知らずにグースカ寝てるわけだ。

「龍太君……君も結構苦労してるね」
「……まーな」

 寝かせられた矢村に、うちわで風を送る大人二名。そのうちの一人の労いの言葉を背中で受け、俺はため息混じりの返事で応えるのだった。

 そして、俺は自ら怪物に食われようとするかの如く、暗闇の先へ飛び込んでいく。
 だが、底は意外にも浅く、すぐに両足が床に着いてしまった。次の瞬間、暗闇を切り裂くように周囲に電灯が付き――眼前に白い扉が現れる。

 その扉に一歩近づいた瞬間、来客を感知した扉は俺を手招きするように開かれた。
 そして、自動ドアを抜けた先には――資料や部品があちこちに散乱した、お世辞にも綺麗とは言い難い研究室が広がっていた。

 何に使うのかわからないパーツやら、意味不明な専門用語が飛び交う書類。それらを踏まないように気をつけながら、俺は辺りを見渡し――椅子にもたれ掛かっている一人の女性を見つけた。
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ