暁 〜小説投稿サイト〜
フルメタル・アクションヒーローズ
第141話 スーパーヒーローは目指せない
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す光を、俺はよく知っていた。
 本来ならば、手放しで喜ぶべきなのかも知れない。地上の陽射しが見えてきたということは、出口が近いということなのだから。

 しかも、あれだけ引っ切り無しに響き続けていた濁流の水音も、いつしかすっかり消え失せている。
 四郷研究所の最上階……つまり入口は、外海の水面より遥かに高い崖の上。そう考えると、水流が止まっているのも当然なのかも知れない。

 これならば、もう悩むことも苦しむこともない。このまま昇り切り、あの陽射しを目指して螺旋階段を突破する。それだけで、ついにこの「戦い」に終止符が打たれるのだ。
 ――ただ、俺が今も「生きて」いれば、の話だが。

「……く、うッ! ……う……ぅ……」

 あの光が目に留まり、思わず安堵してしまう、自分の心。それが命取りになってしまったのだろうか。
 ほんの少し、力が抜けて――階段に躓いてしまった。

 そこから立ち上がる力は、気力は……もう、残されてはいない。俯いた先に見える足元は、小刻みに震えるばかり。目前の出口に喜ぶどころか、歩くことさえ――口元に笑みを浮かべることさえ、できないのだ。

「……ん……ぅ……」

 目の前の「地上」を見上げることも許されず、冷え切った身体から生気が抜けていく。とうとう、俺自身の力も全て尽きてしまったらしい。

 ――あぁ、死んじまうのか、俺。
 ちくしょう、悔しいなぁ。あと、ちょっとだったのに、なぁ。

 ごめんな。救芽井。……俺、生きててやれなくて。

「……」

 ――うめき声すらも上がらないまま、俺はゆっくりと頭から倒れ伏していく。瓦礫をかわしても、濁流から逃れられても、階段を登れなかったらどうしようもないというのに。

 ここまで来ていながら、最後の最後で「負け」を喫した自分のふがいなさを、俺は顔に出すことなく嘲笑う。結局、俺はヒーローになんてなれなかったのか、と。

 そして、成す術がないまま、足元に映る自分自身の影に落ちていく……その時。

 何かが――何かの腕が、俺の身体を受け止めた。

「……?」

 それが誰なのか。どうして俺を助けるのか。それを考えようとするよりも早く、俺の意識が闇の中へ溶けていく。

 俺の傷付いた胸を抱く、翡翠色のしなやかな腕。

 ――微かに見えたそれだけを、脳裏に刻み込みながら。

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