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フルメタル・アクションヒーローズ
第140話 魂に愛がなければ
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 ぐぅ、おッ!」

 瀧上にあっさり砕かれる装甲だったところを見るに、俺とあまり変わらない重量だと思っていたのだが――腕に掛かる負担は、想像を絶する重さとなっていた。

 普段通りなら、こんな胴体一つを脇に抱えるくらい何でもなかったはず。ましてや、今はパワーアップしているというのに。

 ――どうやら、人工筋肉もとうとう過労でブッ倒れたみたいだな。「救済の超機龍」のスーツも、今となってはただの重たいプロテクター、ということか。道理で、スーツが死体のように冷たいわけだ。

 一時はダメージ警告を繰り返していたバイザー映像も、すっかり機能を失ってしまっている。余りに酷使しすぎたせいで、自動で着鎧が解除されるシステムもイカれてしまったようだ。

 ……へっ。どこまでもシビアになって来やがる。口が瀧上で塞がってなけりゃ、今頃は乾いた笑いしか出て来なかっただろうな。

 ここまでしても、待ってるのは罵倒や叱責だろうし……運命の女神様は俺を助けたいのか殺したいのか、どっちなんだよ?

「ふーっ、ふぅッ……う、ぐッ!」

 ――まぁいいか、どっちでも。俺は二人を連れて、いやがおうでも生き延びる。今気にすることはそれだけってことに、しとくかな。

 俺は深呼吸を経て、今一度気合いを入れる。その瞬間、スーツの重みや疲労ごと押し上げて、俺は古我知さんを抱えたまま再び動き始めた。
 目指すは、矢村が一足先へ向かっていた螺旋階段。そこにたどり着けば、あとは登るだけ――

「うおッ……!?」

 ――というところまで来たというのに、ここに来て落石が激化しやがったッ……!
 浸水もさらに勢いを増し、さながら津波のような水流が、グランドホール全体を飲み込もうとしている。濁流に飲み込まれた瓦礫が、次々に轟音と共に流され、無惨に砕け散っていった。

「うっ……く、くそったれめッ……!」

 もう数分も経たないうちに、俺の首まで海水に浸されそうな勢いだ。落石は格納庫まで行ければ避けられるだろうが、浸水はあの勢いなら、どこまでも追って来るだろう。

 無駄な思考の一切を遮断する、濁流と落石の大合唱。戦いの中で目を背けていたその実態が、ここぞとばかりに牙を剥き、襲い掛かっているのだ。
 この戦いを生き残る、最後にして最大の障壁。その壁が今、唸りを上げて俺に迫ろうとしている。

「間に合え……間に合ってくれよ……!」

 死に物狂いで身体を引きずり、螺旋階段を目指す俺。その背では、破壊に次ぐ破壊の交響が神の怒りのように轟き続けていた。
 生きるか死ぬか。脱出か圧死か。

 その答えが決まる瞬間が、目と鼻の先まで、迫っている……。

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