第139話 俺と貴様の最終決戦
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つ確実に無力化するには、あの強固な頭部をもぎ取るしかないのだ。
「ゴオ、ガァッ!」
「ぐっ――あぐぁアァッ!」
だが、相手もバカじゃない。意識障害とは思えない反応速度で、太股を上げて俺の回し蹴りを阻むと、即座に腰の回転を切り替えて逆の足で俺を蹴飛ばしてしまった。その一撃で、焼けるような熱さで肉体を焦がされ、内臓まで押し潰されていくような感覚に襲われる。
歴戦の経験に裏打ちされた「反射」だけで、これほどの反撃をこなしているのだろうか。
再び腹に突き刺さる、鋼鉄製の足の裏。攻撃を受けた痛みそのものは、さっきに比べりゃ屁でもない――が、体力の消耗度はそれを遥かに凌ぐものだった。
「ぐッ……!? ハ、ハァ、ハァッ……!」
無理な筋力強化を経たスーツに、中身の身体能力が追い付いていないのか。それとも、着鎧甲冑の人工筋肉自体が異常をきたしているのか。
いずれにせよ、俺の立たされている状況が、今でも著しく不利だということだけはハッキリとわかる。対等以上に戦える力があっても、そこに至るまでにバテているようでは宝の持ち腐れなのだ。
万が一、このまま疲労感に負けてしまえば、次に訪れるのは「死」の一文字。
だが、地面に顔面を押し付けている間に感じていたのは、着鎧前のような「死」に近づくイメージではなかった。
脳裏を過ぎったのは――瀧上に苦しめられていた、三人の人物。
彼を愛して、裏切られ、それでも信じたい気持ちまで踏みにじられた所長さん。両親の敵を討ちたい、という自身の想いを乗せた上で、俺を瀧上のようにさせまいと説得していた古我知さん。
……そして。
「し、ごう……し……ごう……ッ!」
どんな地獄に自分自身を焼かれようとも、ひたすら俺や姉を案じ続けていた機械少女。その姿を思い起こした時、俺は無意識のうちに地面を片手で押し込み、うずくまっていた上体を持ち上げていた。
――白目を剥き、絶叫を上げ、血の涙を流しても、あの娘は……誰かを想いやる「人間」であり続けていた。身も心も「怪物」になってしまった瀧上や、生身でありながら「怪物」になろうとしている俺なんかには、到底マネできない。
どんな世界に生きていても、彼女は――四郷鮎子は、「人間」だったのだ。
そんな立派な「人間」さえも、俺の眼前にいる鉄人はおもちゃのように蹂躙していた。自分に怯える彼女を、弄ぶように。
無自覚のうちに、それほどの行為を尽くしていた事実。それは、知った上での非道よりも遥かにタチが悪い。
ゆえに、こんなにも腹が立つのだろう。あの娘までも地獄に縛り続けていた瀧上にも、そんな彼をどうにも出来ずにいる、俺自身にも。
「――ぐっ、ぅうッ……!」
だが、だからといって着鎧甲冑の矜持を捨て
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