第136話 古我知の懸念
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か。
だとしたら、やはり少しでも心配を掛けないようにするには、彼女を早く現場から遠ざける以外にはないのかも知れない。これから俺は、どこまでも「無茶」をする可能性があるのだから。
――これ以上、この娘の悲しむ顔は見ていられない。
結局はそんな身勝手窮まりない、俺個人の都合でしかないが……かと言って、彼女をこの場に巻き込み続けるわけにも行かないだろう。
「古我知さんの言う通りなら、格納庫はまだ安全だ。落石がないなら、螺旋階段を登るだけで大丈夫だし」
「……ホ、ホントに、ホントのホントにすぐ帰ってきてくれる?」
「もちろん。だからちょっとだけ、我慢してくれるか?」
「……わかった。――龍太、お願いやから、ホントに早う帰ってな!? 絶対やで!? 絶対絶対ホントのホントのホントやでッ!」
「おうッ! 四郷のこと、頼んだぜ!」
――彼女なりに、懸命に受け入れようと頑張っているのだろうか。心配げに何度も確認を取る一方で、俺のわがままを否定することなく、こちらの都合に付き合ってくれている。
ごめんな、矢村。何かと心配ばっかり掛けてよ。
……絶対に、生きて帰るから。向こうでちょっとだけ、待っててくれ。
不安げに何度もこちらを振り返りながら、四郷の頭を胸に抱き、グランドホールから走り去っていく彼女。
その背中に、俺はそう誓う。
そして、彼女の姿がやがて見えなくなった時。
「さて――どういうつもりなのかな。龍太君」
俺の考えていることを全て見透かした上で、古我知さんは低い声色でそう呟いた。
刃物よりも鋭利な瞳で、俺の眼を貫きながら。
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