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フルメタル・アクションヒーローズ
第132話 「必要悪」の所以
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する必要はないだろう。
 人を殺すことが「悪」だとわかった上で、それを実行する覚悟が「必要悪」という名の所以とするなら、なおさらだ。

 だけど、俺は? 人の命を救うための着鎧甲冑で、そんなマネが許されるのか?

 ましてや「救済の超機龍」は誕生の経緯はどうあれ、救芽井の夢を背負って生まれた着鎧甲冑であることには違いないはず。それを使ってこんな作戦に協力することが……本当に正しいのだろうか。

 ……いや、それ以前に、俺がアリーナまで誘い出すまでに殺されても作戦はおじゃんになる。その時点で古我知さんも打つ手を失い、矢村も四郷も死ぬ。
 いい作戦どころか、いつ誰がどうなっても不思議ではない。命を対価に宝くじに挑戦するよりもシビアだろう。

 ――だが。

「しゃーねぇ。他に手段がないんなら、それで行くしかないよな。うまく四郷ごと吹き飛ばさないようにしないと、俺は承知しないぞ」
「君こそ、僕の期待を裏切って勝手に死なないでくれよ?」

 やるしか、ない。

 だって、救芽井や所長さんに約束しちまったんだから。絶対に四郷を助けると。

「あ、そうだ」
「どうしたの? 龍太く――ッ!?」

 ことのついでに、白銀の鎧に隠れた腹に思い切り突きを入れてやる。おばちゃんを線路に放り込んでくれた分だ。
 ……まぁ、生身の人間の拳が、サイボーグに通じるはずはないんだけどな。現に古我知さんは少し驚いたような顔をしたくらいで、全くダメージを受けていないようだった。

「赤の他人まで巻き込んだ落し前だ。事態が事態だし、今はこんなとこで勘弁しといてやる」

 むしろ、痛いのは俺の方。やる前からわかっていたことだ。だからこれは、古我知さんではなくて俺への「落し前」。絶対に助けるなどとデカい口を利いておきながら、人の助力がなきゃ何もできない俺自身への、戒めだ。

「……全く、君も相変わらずだよね。そういう自分の痛みに無頓着過ぎるとこ」

 古我知さんも分かっているらしく、俺の面倒な性格に苦笑いを浮かべていた。――あんたには言われたかねぇや。

「よし、それじゃ行こうか」
「ああ。……そっちこそ、期待を裏切るなよ。古我知さん」

 ここまで来たら、あとは死ぬ気であのデカブツを引き付けるだけだ。「救済の超機龍」のバッテリーもピンチだが、やるしかない。

 俺は仮面を被り、戦闘準備に入りつつある古我知さんに続くように、「腕輪型着鎧装置」を装備している右の手首を捻る。そして、隙間から身を乗り出そうと脚を伸ばした時。

「龍太、龍太ッ! ちょお、待ってやッ!」

 ――矢村の悲痛な叫びが、俺の歩みを引き留めた。

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