暁 〜小説投稿サイト〜
フルメタル・アクションヒーローズ
第106話 始まりの舞台、それは幻想の廃墟
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る「目的地」の情報が既にある今、勝敗を左右するのはあなた達の現場における「基本性能」と「本人の能力」に裏打ちされた行動力よ! ただ、現場のシビアさを踏まえて必要最低限のマップデータしか送らないから、予想外のケースにも対応できる準備をしておくこと!』
『彼女の言うとおり、この勝負の判定は主に君達自身のフィジカルに懸かっている。しかし、優位に立とうと焦燥に駆られてメンタリティに支障を来せば、それは実際の行動にも少なからず影響を及ぼすことになる。くれぐれも気を付けたまえ』
「……了解……」
「お、おう」

 所長さんの説明に付け足された、伊葉さんの補足。その声色は、この第一戦における大きな落とし穴になるという「警告」の色が感じられた。

 確かに、救助対象者を助けたからといって、そのために無茶をして対象者を死なせたりなんかしたら本末転倒だ。そこに気を遣わなくては、この三本勝負を制することは出来まい。

『では、各自のバイザー及びアイカメラに、救助対象者のデータを転送するわ。転送完了と同時に、テスト開始よ。各自、実践の感覚で迅速に対応すること!』

 その時、所長さんの声から感じられる雰囲気に、変化が訪れる。いつになく真剣な――あの夜を思わせる声だ。

 俺は条件反射で、いつでも飛び出せるように重心を足のつま先に落とし、視界を包むバイザーに映る「NOW LOADING」の文字を注視する。恐らく、四郷にも同じものが映っているのだろう。

 夏の暑さゆえか、焦燥ゆえか、あるいはその両方なのか。「救済の超機龍」のマスク内は、俺の僅かに荒い吐息と頬や顎を伝う汗で、「戦い」が始まる前から既にサウナ状態だ。

 転送されたデータが、ロードを終えて展開される。コンピュータの動作の中で、これほど単純なものはない。それは、そこまでコンピュータ関連に詳しいわけでもない俺にだってわかる。
 だが、このデータが救助対象者に関する情報を開示した瞬間、ここまで来た意味の全てが懸かった競争が始まるのかと思うと、こんなシンプルなプログラムにさえ神経を擦り減らしてしまう。
 そのくらい、このコンペティションには重要な意味がある。負けられない、負けるわけには――

「……ッ!」

 ――その時。意味もなく俺は「再現された」地面を蹴り、正面に駆け出していた。

 「NOW LOADING」の文字に代わり、バイザーから見える視界の右端に顕れた、この廃墟全体を示したものと思しきマップ。その存在を俺の視神経が頭脳へ伝えた瞬間、脊髄で反応するかのごとく、俺は行動を開始していたのだ。
 そして、それに対応しているかのように、マップ内を北に向かって猛烈に直進している赤い光点。恐らく……いや間違いなく、これが俺の居場所を指したポインターなのだろう。
 とすると、マ
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