暁 〜小説投稿サイト〜
フルメタル・アクションヒーローズ
第92話 ダイナミック進水式
[2/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
ーだったなぁ。そういや、ここ数日はシャレにならない暑さだったっけ……。

「しかし一煉寺龍太、貴様よくイカダの作り方など心得ていたな。それも、縄の編み方まで。庶民の学校ではそのようなところまで?」

 茂さんは俺の教えたやり方で、藁として使える草を編む作業を続けている。
 ――って、なんで教えた俺より上手いんだよ……。明らかに運動能力の変化そのものには俺より慣れてやがるな。……どんだけ日頃から着鎧して訓練してんだか。

「……いや、俺の場合はちょっと、な」

 ――去年、「健全かつ強靭な精神を養うため」とか言われて、兄貴に無人島へゴールデンウイーク中に放り込まれたのを思い出し、思わず身震いしてしまう。あれは確か、県外の港へ兄貴に連れ出された時のことだった。
 真水の確保、食料の調達。寝床の用意。そして、自力による脱出の準備。
 それらを全てこなすことを強いられていた当時の俺は、ただ必死だった。人が住んでいる向こう側の港は、無人島の浜辺から見える場所ではあったが、泳いで帰れる場所ではなかった。
 「ゴールデンウイーク中に港まで生還できなければ、俺はこのまま松霧町に帰る」。そんな無茶苦茶な条件を付けられてパニクる中、たどり着いたのが「イカダ作り」。着鎧甲冑などなかった当時の俺は、丸太の代わりに太めの枝を何十本、何百本もかき集め、今のように乾燥したイネ科の植物からできた藁を編み、縄を作り――イカダを自力で組み立てたのだ。
 そして、食事など、最低限の生活能力を維持しながら慣れない作業を続けた後、俺はゴールデンウイーク最終日の夕焼け空の下、帰ろうとしていた兄貴の車にボロボロの格好で滑り込んだのだ。
 厳しさしか見せなかった去年の兄貴が、俺に笑いかけたのは、その直後が最初であり――最後だった。

「――よし! 大体こんなもんかな」
「ふむ、ようやく完成か。しかし一煉寺龍太、こんな手間隙のかかる作業をするくらいならば、遊泳には使いづらくともボートを借りた方が早かったのでは?」
「あはは、それ言ったら元も子もないだろう。それに、こういうのは『気持ち』だよ!」

 そして、着鎧甲冑を使った人間二人掛かりで組み立てたイカダを、俺は全力で担ぎ上げる。茂さんも何か思うところがあったのか、「紳士にあるまじき行いだ……」とぼやきつつ、俺の後方を支えてくれた。

 林を出た途端に襲ってくる――はずだった日差しを、出来立てホヤホヤのイカダにガードしてもらいながら、俺達はようやく完成したイカダをお披露目するところまでたどり着く。

「りゅ、龍太君!? 帰ってこないと思ったら何を……!」
「な、な、なんやそれえぇっ!?」

 いきなり林から飛び出してきた丸太の集合体に、救芽井と矢村は驚きの声を上げる。だが、四郷姉妹と久水は特に叫ぶような気
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ