暁 〜小説投稿サイト〜
フルメタル・アクションヒーローズ
第82話 今夜のディナーは危険な香り
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サラダ、ご飯にみそ汁となかなかスタンダードな組み合わせになっている……が、用意の仕方が無駄にハイテク過ぎる。だが、それに驚いている余裕すら、俺にはなかった。

「この私を差し置いて四郷さんと浮気だなんて……許さない。絶対に許さないわよ龍太君! じわじわと私の『あーん』だけでお腹いっぱいにしてあげるわ!」
「なにを戦闘力五十三万の宇宙人みたいなこと言いよるんや!? ――ふんっ! アタシの方が経験豊富なんやから、龍太はアタシを選んでくれるに決まっとる! 日本人は、新しいものより慣れてるものの方を選ぶもんなんやけんなっ!」
「あぁーら! そういう理論でしたら最後に勝つのは、このワタクシでしてよ! 龍太様と最も古くお付き合いしているのは、このワタクシざますっ! 例え鮎子でも、龍太様だけは渡しませんわっ!」
「……梢。ひどい勘違い……」

 三人の美少女が、鬼気迫るオーラを眼光に込めてひしめき合うこの状況で、晩御飯を滞りなく食えると思うか? しかもさりげに茂さんがまた撃墜されてるし……ここ最近、殴られすぎだろアンタ。いい加減報われろ……。

「と、とりあえず俺、トイレ行ってきまーす……」

 とにかく、これ以上この場にいたら確実に食事どころじゃなくなっちまう。傍観を決め込んでて完全メシウマ状態の所長さんには悪いが、一旦エスケープさせて頂く。
 俺はコップに注がれていたグレープジュースを飲み干し、そそくさと来る途中で見掛けたトイレへ退散していく。

「ちょっ!? 龍太君、逃げる気ッ!?」
「あんまりざます龍太様ぁ! ワタクシとは遊びでしたのぉっ!?」

 なんとでも言いやがれ。例えメシを食いっぱぐれようと、修羅場で命を落とす顛末だけは御免だ。

 ……って、あれ?

 ふと、俺は食堂から出る瞬間、テーブルに各人へと並べられたコップに違和感を覚えた。――注がれた中身が、違う?

 グレープジュースだったのは俺だけで、救芽井・矢村・久水の三人はオレンジジュースのような黄色い飲み物が注がれている。あとは全員、ただの水みたいだ。
 客人だからもてなしましたって意味か? でも、伊葉さんも客人だよな……? 大人だから水にされたのかな。

 そういや、俺がさっき飲んだグレープジュース……なんか味が変だったような。慌てて飲み干したからあんまり気にしてなかったけど……。

 ……。

 ……き、気のせいだよなっ! いくらなんでも考えすぎだろう!
 何か仕掛けがあるだなんて一瞬でも疑ってしまったことは、恥じるしかない。ここ最近、不可解なことばかりだったから、ちょっと疑心暗鬼になってただけだよ、うん!

 そして迷いを振り切るように食堂に背を向け、俺はトイレへ向かう。そして、男子トイレの青いマークが見えた瞬間――

 ガッ
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