暁 〜小説投稿サイト〜
フルメタル・アクションヒーローズ
エピローグ
第46話 一年半の月日
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晩かけて書き上げた、受験対策の即席参考書だったのだ。
 賀織を「解放の先導者」から救い、龍太を送り届けた後、樋稟は龍太が受験生であることを気にかけていた。このままでは、彼らの日常を壊してしまう。そんな葛藤が、少なからず彼女の胸中に存在していた。
 それゆえに、彼女はせめてものフォローとして、彼らが受験するであろう唯一の地元高・松霧高校の過去問や出題形式を調べ上げ、そのデータをノートへと書き起こし、本にしていたのだ。少しでも助けになればと、「彼らへの協力」と「自分への慰め」を込めて。

 彼女達一家が去った後に、そのノートを発見した龍太は兄と顔を見合わせ、それが何なのかを悟った。そして、その誠意に精一杯報いることに決めたのだ。
 知り合った人間にここまでされて、勉強する気が起きなくなる程、彼は甲斐性のない男ではない。残されたデータを自分なりに理解していき、やがて「合格」という形で応えることに成功したのだった。

 そうして樋稟の助けのおかげで合格できたことを、龍太は手放しで大喜びしていた。しかし一方で、その隣に立っていた賀織が悔しげに唇を噛んでいたことには、気づくことはなかった。
 彼女としても、想い人と再び青春を共にできることは至上の喜びであった。龍太と同じ学校に通える、それはあの冬休みに彼女が思い描いていた、理想の世界そのものであったのだから。

 しかし、そんな理想を実現させたのは自分ではなく、樋稟。ライバルだったはずの彼女の功績が、自分の夢を叶えてしまったのだ。
 龍太はノートを手に入れるまで、勉強を見てくれていた賀織にも、感謝の気持ちを伝えてはいたが、それでも彼女自身の内心には、敗北感が漂っていた。
 後から急に出てきて、自分の役目を奪われてしまった。賀織が感じたことは、まさにそれだったのだ。
 だが、樋稟のおかげで今の高校生活があるのも事実。そのことには深く感謝しているし、賀織自身も彼女の生き様を深く尊敬していたのも、確かなことであった。
 故に渦巻く、複雑な気持ち。スーパーヒロインとして、または女性として尊敬し、その一方で想い人を取り合う、ライバル関係。
 樋稟の態度から、彼女も龍太を好いているとすぐさま見抜いていた賀織は、彼女に感謝の気持ちを持っている龍太を見て、複雑な想いを抱かずにはいられなかった。

 そして、そんな心のもやもやを打ち破ろうと彼女が起こした行動が、「今まで以上のアプローチ」であった。
 もし樋稟が、いつか龍太を奪いに来たとしても、その前に既成事実を作っていれば手出しはできない。日本では、重婚が認められていないからだ。
 思い立ったら即行動、というのが基本パターンである彼女は、そうして高校に入学すると同時に「今の日課」を始めたのだ。
 朝は毎朝起こし、昼には弁当を渡し、学校が終われば必ず
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